研究課題/領域番号 |
21K03337
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12030:数学基礎関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
中本 敦浩 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (20314445)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | グラフ / 染色数 / 四角形分割 / 射影平面 / 射影空間 / ゾノトープ / representativity / 局所平面的グラフ / 閉曲面 / 頂点彩色 / 局所平面グラフ / 三角形分割 / グラフ彩色 / 曲面 / 彩色 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の中心テーマは,局所平面的グラフが4-彩色不可能となるための構造を分類し,Albertson予想を解決すること,つまり,「曲面上のどんなグラフも本質的には4-彩色可能である」ことを明らかにすることである.一方,私たちのこれまでの研究課題の中には,それらに有効な知見が得られると,その解決に大きく近づく未解決問題がいくつもある.ゆえに,これらの周辺課題についても包括的に考えることにより,私たちの取り組む問題は幅広い研究テーマになり得る.これらは,当該分野における極めて中心的な話題であり,これらに関するどんな部分的解決も大きなインパクトを与える.
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研究実績の概要 |
平面グラフの染色数は,四色定理により,4で抑えられることが知られているが,閉曲面上のグラフの染色数の上界は,閉曲面の種数を大きくすると単調に増加することが知られている.それに対して,閉曲面上のグラフの非可縮閉路の長さが十分に大きいとき,染色数は絶対定数によって抑えられることが知られている.本研究では,閉曲面上のそのようなグラフを「局所平面グラフ」と呼び,どんな局所平面グラフが染色数の上界を実現するかについて考察することを目標としていた.その目標設定は,私がこれまで行ってきた閉曲面の三角形分割や,向き付け不可能な曲面の四角形分割,さらには,閉曲面の偶三角形分割の結果を組みあわせて行われ,当該分野の最後の研究テーマであろうと考えている. 閉曲面上の局所平面四角形分割は,曲面の向き付け可能性により,全く異なる現象を見せることが知られており,その不思議な現象が偶三角形分割の染色数の振る舞いにも影響している.特に,射影平面の四角形分割の染色数がとてもわかりやすく,その現象の証明も簡単である.本研究では,閉曲面上のグラフから離れ,高次元射影空間の立方体的複体を四角形分割と見なし,その骨格の染色数を決定することに成功した. 先行研究として,Kaiser-Stehlicが射影空間のある四角形分割(KS四角形分割という)に関して,同様の結果を示していたが,私たちはそれらとは全く異なる四角形分割(normal四角形分割という)を定義し,ある種の幾何学的性質を満たすものに関して興味深い結果を得た.さらに,KS-四角形分割とnormal四角形分割の差異を考察し,互いの結果に意味があることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画を立案した段階では,染色数が最も大きくなる局所平面グラフの分類を行う予定であったが,その中で射影平面の四角形分割が,局所平面性によらず不思議な現象を起こすことに着目した.その結果,Kaiser-Stehlicの高次元射影空間の四角形分割の結果が,次元に関して実に興味深い一般化を行なっているのを知り,そちらの方向性の研究を試みた.しかしながら,私たちにとって,彼らの四角形分割の定義が不自然であったため,より自然な設定で四角形分割が定義できないかと考え,normal四角形分割の定義へと至った. しかしながら,任意の次元のnormal四角形分割の構成法が難しかったが,私の過去の研究から,ゾノトープと呼ばれる構造から高次元多面体が得られ,さらに,そこから高次元射影空間のnormal四角形分割が得られることがわかった.そして,それらの染色数を調べた結果,Kaiser-Stelikの結果とは全く異なる現象を発見することができ,面白い研究成果が得られた. もともとの研究計画とは少し目標が異なってしまったが,射影空間のゾノトープ的四角形分割を定義することができ,それらに関連する興味深い結果が得られたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
上で述べたように,高次元射影空間のゾノトープ的四角形分割は比較的簡単に構成することができ,かつ,その組合せ構造もシンプルである.また,それらを記述する既存研究も多く,それらが道具として使用できたため,とても興味深い結果を得ることができたと考えている.したがって,「ゾノトープ的」という条件が,normal四角形分割全体の中でどのような条件になっているのかを,改めて考察したいと考えている.つまり,ゾノトープ的でないnormal四角形分割はどんなものかを記述し,さらに,その骨格となるグラフの染色数を考えたいと思う.そのためには,さらなる情報収集から始める必要があり,多面体幾何や計算幾何の研究者との情報交換が必要である.
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