研究課題/領域番号 |
21K03341
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12030:数学基礎関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
古市 茂 日本大学, 文理学部, 教授 (50299327)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | エントロピー / 不等式 / 作用素 / 行列平均 / 凸解析 / Jensen不等式 / Aczel不等式 / Gruss不等式 / 相対エントロピー / 正作用素 / 作用素平均 |
研究開始時の研究の概要 |
エントロピーや相対エントロピーなどの情報量は密度作用素によって定義される.また作用素論や行列解析において,正定値行列に関する研究は多くされてきた.この6-7年の間に,その正定値行列に対して拡張された概念としてセクター行列が導入され,様々な数学的研究がされてきた.量子情報理論の数学的研究は一部完成していない部分があり,終わりが見えていない.その中でも量子力学的な情報量に関する解析的な研究は基本的かつ重要な分野となっている.量子情報理論における重要かつ根本的な問題に挑戦する.同時に作用素論におけるセクター行列や正定値行列に関する不等式全般の基礎的な研究を遂行する.
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研究実績の概要 |
情報理論および作用素論に関する不等式の研究成果として主に次の結果を得た.(1)作用素平均の差の特異値に関する不等式を得た.得られた結果はこれまでに知られていた結果を改善または補間するものとなった.また,特異値不等式以外にも幾つかの行列不等式を得た.(2)作用素測地的凸と作用素凸対数関数を導入しこれらに関する幾つかの性質を特徴付けた.これらの関数のクラスを適用してこれまでに知られていた結果を拡張した作用素Aczel不等式およびMinkowski型の不等式を示した.(3)Zou-Jiangnの不等式を一般化したYoungの不等式を改善した.重み付き算術平均と幾何平均を用いて対数平均の上界を与えた.得られた本質的なスカラー不等式を基礎として,Zou-Jiangnの不等式の一般形を与えた.すなわち,重みのパラメータを用いた作用素相対エントロピーを用いた作用素不等式を証明した.最後に,Tsallis作用素相対エントロピーによって,さらに一般化された作用素不等式を与えた.(4)情報理論において対数和不等式は基本的な道具であり相対エントロピーの非負性を与えるものである.2つの関数を含む対数和不等式を示した.パラメータ拡張された対数和不等式も併せて示した.まず,これらの結果を可換な行列に対して拡張した.加えて,レヴナーの半順序とHansen-Pedersen理論を非可換な半正定値行列に対して用いることによって,スカラーの対数和不等式と類似した幾つかの行列不等式を証明した.(5)Hilbert空間上における2つの正作用素に対するスペクトル幾何平均に対して新しい不等式を証明した.ここで得られた結果は幾何平均に対する多くの知られた不等式を補完するものである.特に,スペクトル幾何平均と幾何平均の明示的な比較を示した.スペクトル幾何平均に対してAndo型の不等式を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も国際会議への参加は出来なかった.そのための準備に割かれる時間と労力を研究時間に利用することができた.年度内に出版された論文こそ5篇(2篇が出版され3篇はonline firstで公開されている)だけであるが,海外の研究者とメール連絡を毎日のようにすることで多くのアイデアを試すことができ,その結果いくつかがうまくいき現在もその方向での研究を続けることが出来ている.また,投稿査読中の論文が単著も含め16篇もあることからも,今年度中に多くの時間を割いてきたことが分かると思われる. 2021年度中に,申請時の目的の一つに挙げたセクター行列に関する研究成果を得たが,その更なる研究結果を得て,現在,論文投稿し査読中である.しかし,Liebの凹性のセクター行列への一般化はいまだに出来ていない. 一方でその他の研究成果を得ていることは確かであり,そのような点からみても本研究課題は概ね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度中に5篇の論文が出版されたが,出版された論文中に私個人の単著論文がないことはあまり評価できない.現時点で3-4件のアイデアを持ち,3篇をレジメとしてまとめている最中であるが,2022年度は共同研究者からの情報共有や新しいアイデアの提供により,本研究を多角的により深めることに注力した.本研究課題は,研究代表者による個人研究であるため,同分野の共同研究者との意見交換を重視していた.一方,本研究課題に関連する複数件のアイデアを私自身が有していたが当該年度中に大きな成果には至らなかった.2023年度はこちらにも注力し,成果発表につなげていきたいと考えている.その点をこの数か月前から反省しつつ,研究代表者自身の研究結果の原稿を複数件まとめている. さて,2022年度中に,国際会議には出席できなかったが,国内会議では2件の講演を3年ぶりに対面で行って,講演後の情報交換などでモチベーションも上がり昨年11月からそれが続いている状態である.数学者にとっては対面での意見交換や議論が如何に重要かを再認識した次第である. 次年度はコロナ明け4年ぶりに国際会議での講演に挑戦しようと考えている所である.
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