研究課題/領域番号 |
21K03352
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小布施 祈織 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (90633967)
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研究分担者 |
山田 道夫 京都大学, 数理解析研究所, 特任教授 (90166736)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 大規模帯状流 / ロスビー波 / 3波非線形相互作用 / 近共鳴相互作用 / 非局所エネルギー輸送 / 回転球面 / 2次元流 / 非圧縮性流れ / 帯状流 / 非線形相互作用 / β平面 / 非圧縮性流体 / 2次元乱流 / 帯状流形成 / リャプノフ解析 / 乱流 / 2次元 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は次の2つの事項に注目して、回転球面上での大規模東西流形成メカニズムを調べる。 1.ロスビー波の非線形相互作用のあり方に注目:ロスビー波が関わる非線形相互作用の, 階乗および二重階乗の組み合わせ表現を利用し,赤道対称東西流に対応するロスビー波が卓越する要因を明らかにする。 2.球面では大規模東西流が速やかに形成されるがβ平面近似モデルでは準東西流で停滞することに注目:球面およびβ平面上での解の振る舞いの違いを,共変リャプノフベクトル・リャプノフ指数の観点から明らかにする。
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研究実績の概要 |
回転球面上非強制2次元流ではランダムな初期流れ場を十分に時間発展させると、両極域に西向き大規模帯状流が形成されるが、そのメカニズムは未だ明らかでない。当該研究課題では大規模帯状周極流形成過程を、この系での流れ場のダイナミクスを完全に支配するロスビー波 (Y_n^m exp(-iωt), Y_n^m は球面調和関数)の3波非線形相互作用の観点から明らかにするため、どのようなロスビー波相互作用がどのようにして大規模帯状周極流形成に関与するのかについて調べている。 大規模帯状周極流形成に直接関与するロスビー波相互作用について、「近共鳴相互作用」および「非局所相互作用」の重要性が2022年度の研究で示唆されていた。2023年度はこれをさらに詳細に検証した。 流れ場の時間発展を記述する球面上Navier-Stokes方程式の非線形項を構成する全ロスビー波相互作用の相互作用係数データを用いて、帯状ロスビー波に(正または負の)エネルギー輸送を行う全てのロスビー波相互作用のうち、ある条件を満たす(たとえば近共鳴相互作用条件を満たす)相互作用のみを抜き出し、それらによる帯状ロスビー波へのエネルギー輸送を計算した。 上記の計算の結果、「近共鳴相互作用と非局所相互作用は異なる概念であるが、この系においてはは近共鳴相互作用と非局所相互作用はほぼ完全に一致」し、「大規模帯状周極流は近共鳴相互作用による非局所エネルギー輸送によってエネルギーを得ている」ことが明らかになった。また、「大規模帯状周極流に(正または負の)エネルギー輸送を行うロスビー波相互作用は非常に多く存在しており、エネルギーを受け取る帯状ロスビー波のnが偶数であれば各々のエネルギー輸送はほぼ完全に相殺するのに対し、nが奇数であればほとんどが相殺するものの若干のプラスが残り、それが大規模帯状周極流の形成につながっている」ことが見いだされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
回転球面上での大規模帯状流形成に関与するロスビー波3波非線形相互作用の理解は順調に進んでいる。しかしながらβ平面では球面でのようなはっきりとした結果を得ることができていない。この違いを生む要因の特定ができれば、本研究課題の最終目標である「(いくつかの具体的な研究課題を通した)回転球面とβ平面上での2次元乱流の性質の違いの理解」につながると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に得られた結果の後半で述べた「大規模帯状周極流に(正または負の)エネルギー輸送を行うロスビー波相互作用は非常に多く存在しており、エネルギーを受け取る帯状ロスビー波のnが偶数であれば各々のエネルギー輸送はほぼ完全に相殺するのに対し、nが奇数であればほとんどが相殺するものの若干のプラスが残り、それが大規模帯状周極流の形成につながっている」については、その振舞いは確認できたものの、原因およびそのメカニズムは全く明らかにできていない。2024年度は各ロスビー波非線形相互作用の位相などに注目し、エネルギーを受け取る帯状ロスビー波のnの偶奇によってエネルギー輸送相殺度合いが異なることのメカニズム解明を目指す。 また、β平面上2次元非強制乱流においては回転球面上でのような明確な結果を得ることができない理由を、ロスビー波相互作用の数学的構造の違いから明らかにすることを目指す。これは、本研究課題の最終目標である「(いくつかの具体的な研究課題を通した)回転球面とβ平面上での2次元乱流の性質の違いの理解」につながると考えられる。
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