研究課題/領域番号 |
21K03358
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
清水 泰隆 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70423085)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | レヴィ過程 / 擬似パス生成 / 分布収束 / パス依存型汎関数 / 期待値汎関数 / モンテカルロ誤差 / デルタ法 / 漸近分布 / セミマルチンゲール / モンテカルロ計算 / 誤差分布 |
研究開始時の研究の概要 |
期待値をベースに計算される量に対して,実務的にはモンテカルロ計算が用いられることが多いが,その計算基礎となる確率モデルに含まれる未知パラメータの推定誤差が無視されることが頻繁に起こっている.そのため,真の値と思って計算しているものが大きく真値からずれていることに気づかず,そこに大きなリスクが生じている.本研究は推定量の漸近分布をもとに,様々な確率変数の期待値汎関数の推測誤差を考慮した真値の推定問題に対して,一定の方法論とその数理的正当性を与える.
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研究実績の概要 |
本年度は,飛躍型確率過程の中でも,独立・定常な増分をもつものとして,レヴィ過程を取り上げ,その期待値型の汎関数の推定問題に注目した.この種の問題は,金融や保険の文脈で頻出するもので,資産過程をレヴィ過程によってモデリングするとき,金融派生商品や,保険負債のようなものが資産過程のパス依存型の期待値として表現される. 期待値型の量を数値計算する際には,モンテカルロ法が基本的な手法であるが,パス依存型の場合,シミュレーションによってそのパスを何本も生成する必要があり,基礎となるレヴィ過程そのものを推定しなければパスを生成することはできない.そこで,レヴィ過程が独立・定常増分を持つことを利用して,離散観測される隣り合う時刻間の増分の順序をランダムに入れ替えることにより,擬似的なパスを発生させる手法を考案した.このようにして構築される擬似パスの確率過程列による表現は,理論的には,真のレヴィ過程へSkorohod空間において分布収束することが示され,これが本手法の理論的根拠となる.その分布収束の理論的証明については論文としてまとめ,国際誌に投稿した. また,この手法を応用し,保険会社が破産時まで配当を行う際の累計期待値を推定することを考えた.この期待値は,破産時刻までの資産過程の積分量を含むため資産パスに依存した汎関数となり,保険数理でよく解析の対象とされる重要な量である.これに対して本研究での手法を用いれば,一組の離散観測データを用いて,複数の擬似パスを発生させることができ,ノンパラメトリックな推定量を構成することが可能となる.論文では,これらの推定量が,サンプルが増えるにつれて,真の期待値に収束することが観察されることを示し,実用に耐えうる手法であることを例証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,レヴィ過程という特殊なモデルではあるが,擬似パスの生成という新しいアイデアとその理論的正当性を与えることができ,順調な進展と言える.また,現実的な問題を意識した応用例を与えることができ,実務での応用も期待される.
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今後の研究の推進方策 |
より現実的な応用を意識して,保険数理におけるいくつかの重要例,例えば,Gerber-Shiu関数などの破産関連リスクに対して,モンテカルロ法による推定法とその誤差評価について考えていく.確率過程のクラスは,現在のレヴィ過程に制限することで,より多くの応用例を考察したい.
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