研究課題/領域番号 |
21K03366
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
緒方 秀教 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (50242037)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 佐藤超函数 / 変数変換 / 常微分方程式 / 数値解析 / 複素関数論 / 解析関数 |
研究開始時の研究の概要 |
数値解析において複素関数論的手法は精力的に研究されてきた.本研究では,佐藤超函数論という複素関数論に基づく一般化関数の理論の観点から,複素関数論を数値解析に用いることの意義を理論的に明らかにし,さらに,佐藤超函数論を用いて複素関数論に基づく数値計算の新たな発展を目指す.応募者はこれまで,数値積分およびFourier変換計算に対し佐藤超函数論の応用を考案したが,本研究ではこれを見直し,佐藤超函数論を通して数値解析において複素関数論を用いる意義を改めて考え,数値解析における複素関数論的手法の新たな発展を目指す.さらに,佐藤超函数論に基づく数値解法の実用化,数値計算ライブラリ作成を目指す.
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研究実績の概要 |
当年度は,科研費研究課題に関連して,佐藤超函数論およびIMT型変数変換に基づく数値不定積分法を用いた常微分方程式の数値解法に関する研究成果を得た. 佐藤超函数論は複素関数論に基づく一般化関数の理論であり,そこで用いられている不定積分の定義を用いた数値不定積分法を考案した.詳しく述べると,超函数論では不定積分はある複素積分で定義され,被積分関数をChebyshev補間により複素領域上に解析接続して,その複素積分を台形則により近似計算することにより不定積分を求める. 一方,IMT型変数変換とは数値積分法のひとつであるIMT公式で用いられている変数変換である.もうひとつの有名な数値積分法であるDE公式(二重指数関数型公式)ではDE変換(二重指数関数型変数変換)が用いられているが,これは近年Sinc近似という関数近似法と組み合わせて,数値積分以外の数値計算(数値不定積分,積分方程式,常微分方程式など)に応用されてきている.これに対し緒方は,IMT公式で用いられているIMT型変数変換も,周期関数に対するSinc近似と組み合わせることにより,数値積分以外の数値計算に応用できることを示している.そして,そのアイディアに基づいた数値不定積分法を考案した. 当年度はこれら2種の数値不定積分法を応用した常微分方程式の数値解法を提案し,理論解析と数値実験によりその有効性を示した.この方法は,問題とする常微分方程式を同等な積分方程式に書き直し,これを上記の数値不定積分と逐次近似を用いて解くことにより数値解を求めるというものである. 常微分方程式の数値解法として従来よく用いられているRunge-Kutta法などは,誤差は関数評価回数の負ベキ乗で減衰するが,本研究の方法では関数評価回数に対し指数関数的収束するという高精度性をもつ.さらに,本研究の方法は並列計算の可能性も期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超函数論的方法もしくは変数変換の技法といった複素関数論に基づく数値計算技法は,従来数値積分に対してのみ有効と考えられていたので,本研究の成果は複素関数論的数値計算技法に対し新たな可能性を示したものと考えられる.さらに,常微分方程式の数値解法は数値計算の幅広い分野において用いられているので,数値解析全体においても本研究の成果は意義あるものと考えられる.こうした点から本研究は順調に進展していると判断する. 一方,当初の交付申請書には,これまでの超函数論的方法において問題となった数値的不安定性の改善,そして,超函数論的方法の数値計算ライブラリの作成といったことも研究目的に記していたが,これらについてはほとんど成果が得られていない.残りの研究期間でこれらの研究も進める必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
当年度の研究では,当初の研究目的にはなかったIMT型変数変換に基づく数値計算技法について大きな成果が得られた.この研究は数値解析において大いに意義があると考えられるので,今後も研究を進めていきたいと考える.一方,超函数論的手法における数値的不安定性の改善,超函数論的手法の数値計算ライブラリの作成については,ほとんど着手されていないので,残りの研究期間でこれらの研究も進めていきたいと考える.
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