研究課題/領域番号 |
21K03370
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐野 英樹 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (70278737)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 双曲型偏微分方程式系 / ファン・デル・ポール境界条件 / 同期化制御 / オブザーバ / 可観測性 / 秘匿通信 / バックステッピング / 半群 / 双曲型偏微分方程式 / バックステッピング法 |
研究開始時の研究の概要 |
ビックデータを扱う情報化社会では、セキュリティの強い秘匿通信システム(情報信号を暗号化/復号するシステム)を構築することが喫緊の課題である。本研究では、カオス的な振動現象を引き起こす双曲型偏微分方程式に着目して、その同期化制御を取り上げる。偏微分方程式は状態変数が無限次元空間に値をとるため、それを用いた同期化制御はビックデータの暗号化に応用できる。本研究の目的は、カオスを発生させる非線形境界条件を有する双曲型偏微分方程式に対して同期システムを設計し、それを含む構造をもつ効率的でかつ安全性の高い秘匿通信システムを構築することである。
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研究実績の概要 |
ネットワークが高速化・大規模化する情報化社会において、安全性の高い暗号の技術開発は重要な課題である。本研究では、セキュリティの強い秘匿通信システム(情報信号を暗号化/復号するシステム)を構築するために、カオス的な振動現象を引き起こす双曲型偏微分方程式に着目して、その同期化制御を取り上げている。本研究の目的は、カオスを発生させる非線形境界条件(具体的にはファン・デル・ポール境界条件あるいはそれに積分項を追加した境界条件)を有する双曲型偏微分方程式に対して、同期化のための制御則を設計し、それを用いて効率的でかつ安全性の高い秘匿通信システムを構築することである。 分布定数系のカオスを利用した秘匿通信システムの構築に関しては、佐野・若生・谷口の基礎研究 SICE Trans. (2021), J. Signal Processing (2022) がある。この中で後者は時空間異方性を考慮した双曲型偏微分方程式系を取り上げ、異方性そのものが共通暗号鍵として有用であることを明らかにしている。 しかしながら共通暗号鍵の数が少ないため、令和4年度はファン・デル・ポール境界条件に積分項を追加した双曲型偏微分方程式系に対して、同期化制御問題を取り上げた。同期システムの構築にはボルテラ・フレドホルム型積分変換によるバックステッピング法を用い、二種類の積分方程式を解くことにより、同期化制御則を導出することに成功した。この場合、境界条件に追加した積分項に含まれる重み関数が共通暗号鍵となるため、従来の鍵空間が大幅に拡張されたことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、セキュリティに対してさらに強いシステムを構築するために、ファン・デル・ポール境界条件に積分項を追加した双曲型偏微分方程式系に対して、同期化制御問題を取り上げた。同期システムの構築にはボルテラ・フレドホルム型積分変換によるバックステッピング法を用い、二種類の積分方程式を解くことにより、同期化制御則を導出することに成功した。この場合、境界条件に追加した積分項に含まれる重み関数が共通暗号鍵となるため、従来の鍵空間が大幅に拡張されたことになる。その成果は、2022年度に論文誌にて掲載されている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、令和4年度に導入した積分項とは異なる積分項をファン・デル・ポール境界条件に追加した双曲型偏微分方程式系を取り上げる。積分項を少し変えるだけで、二種類の積分方程式を解くことなしに同期化制御則が構成できることを令和4年度中に発見していたが、その事実を用いることにより、共通暗号鍵の役割を果たす重み関数を通信ごと変更可能になり、より安全なシステムになる。 重み関数を別のカオスシステムとその同期システムを用いて動的に生成した場合の秘匿通信について、令和5年度に開催される国際会議で発表予定であるが、そのときの議論を踏まえて秘匿通信システムをより深化させるつもりでいる。
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