研究課題/領域番号 |
21K03389
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
石坂 智 広島大学, 先進理工系科学研究科(総), 教授 (10443631)
|
研究分担者 |
畠中 憲之 広島大学, 先進理工系科学研究科(総), 教授 (70363009)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
|
キーワード | 量子相関 / ホーキング輻射 / ウンルー効果 / タキオン / 量子化条件 / ベル不等式 / ベルの実験 / チレルソン限界 / 量子相関限界 / 量子自己テストプロトコル / 量子不確定性 / 量子情報 |
研究開始時の研究の概要 |
量子力学的にエンタングルした状態に対する遠く離れた2者の測定結果の間には、古典力学では説明できない相関が現れる。この量子相関は、光速を超えた情報伝達を禁止する相対性理論の原理とは矛盾しない。むしろ、もっと強い原理によって制限されている。本研究課題の目的は、量子力学の奥に潜み、量子相関の限界を決めている基本的な原理を解明することである。我々は既に量子相関の極点条件予想を独自に得ているが、その予想を厳密に証明することを通し、奥に潜む基本原理を解明するとともに、量子不確定性と量子相関限界との関係等も明らかにする。更に、実験に適した量子状態の自己テスト法や真性乱数生成法の構築といった応用展開も行う。
|
研究実績の概要 |
(1) 実験的モデルの提案 (i)ホーキング輻射:ホーキング輻射は,事象の地平線で量子ゆらぎによって対生成された量子相関を持った放射現象であるため,量子相関と不確定性の限界を同時に探索でき,本研究課題の検証に適している.本年度は,ホーキング輻射の観測における課題の改善方法を検討した.これまで,4波混合パラメトリック増幅によるホーキング輻射の増幅であるため,ホーキング輻射とポンプの周波数が近く,これらの分離が困難なため,観測の障害となっていた.そこで,超伝導非対称非線形素子を導入し,周波数が離れた3波混合を用いた新たな擬似的ブラックホールを考案し,観測可能性を高めた. (ii)ウンルー効果:ホーキング輻射と双対なウンルー効果についても検討した.ウンルー効果は,静止している物体にとっての真空が,加速している物体には熱浴に見える効果であるので,基本原理探索におけるデコヒーレンスの効果を検討する際,有効である.今回,ホーキング輻射のシステムを拡張し,ウンルー効果の観測方法の提案を行った. (iii) タキオン: 本研究の過程で,ホーキング輻射と同じシステムで,タキオン場を再現できることがわかった.ホーキング輻射同様,タキオンも真空ゆらぎから対生成されるので,相対論的量子相関の研究への展開が可能であることがわかった. (2) 量子相関予想とalmost quantumnessとの関係: 量子相関予想では,その全ての量子性はalmost quantumnessという簡単なものであるのではないかとしていた.今回,この予想の正当性を検証し始めたが,その予備的結果は,「全てがalmost quantumnessにはない」という否定的なものであった.本来,量子相関予想 とlmost quantumnessとは関係がないものであるが興味深い.次年度に最終結果を出し論文にまとめる予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今期になって,実験モデルにおいて3件も成果がでてきた.ホーキング輻射,ウンルー効果とタキオンに関するもので,どれも極めてインパクトが大きいと判断している. 量子相関予想の問題に関しては,今まで着目してこなかったalmost quantumnessとの関係性について調べ始めた.これに答えることが,「何故,量子相関予想は極めて簡単なのか?」という設問に対するヒントを与えてくれると考えている. 以上のことから,研究計画はやむを得ず1年延ばしたものの,概ね研究計画の通り進んでいる.
|
今後の研究の推進方策 |
実験モデルについては,まだ論文になっていないものを論文にする.量子相関予想については,最終結果を出して論文にまとめる.研究計画が1年延びているので,論文の執筆に重点を置きたい.
|