研究課題/領域番号 |
21K03392
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
秋元 琢磨 東京理科大学, 理工学部物理学科, 准教授 (30454044)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 非平衡物理 / 非定常現象 / レーザー冷却 / 無限測度エルゴード理論 / 非平衡 / 非定常 / 非平衡統計力学 |
研究開始時の研究の概要 |
レーザー冷却過程では、分布関数や統計量が時々刻々と変化する。そのような非定常な過程では、従来の定常性を仮定した確率論によるアプローチができないため、その理論的取り扱いが困難になっている。これまで、レーザー冷却過程において、何故、そして、どのように運動量がゼロになるか直感的には理解されているが、冷却された気体の運動論は明らかになっていない。 したがって、このような非定常な過程の分子運動論を構築することが重要な問題となっている。本研究では、非定常過程の基礎理論の枠組みを構築することが可能であると期待されている無限測度エルゴード理論を用いて、レーザー冷却過程の分子運動論を構築する。
|
研究実績の概要 |
レーザーを用いた冷却では、フォトンの吸収・放出により、 原子の運動量をランダムに変化させる。実験的には、Velocity Selective Coherent Population Trapping により、運動量に応じてフォトンの吸収・放出を変化させ、低温の原子はフォトンとエネルギーのやり取りを行わないようにすることができる。したがって、冷却過程は、運動量空間上で不均一なジャンプ率を導入したランダムウォークで記述される。このランダムウォークモデルは運動量ゼロに向かう力がないにもかかわらず、運動量は分布としてゼロに向かっていく。このような分布関数や統計量が時々刻々と変化する非定常な過程では、従来の定常性を仮定した確率論によるアプローチができないため、その理論的取り扱いが困難になっている。これまで、何故、そして、どのように運動量 がゼロになるか直感的には理解されているが、冷却された気体の運動論は明らかになっていない。 本研究の目的は、レーザー冷却により冷却された原子(気体)の運動論を構築する事である。 本年度は、レーザー冷却の1粒子のモデルとして、三つの確率モデルのエルゴード特性を研究し、運動量空間上のプロパゲーターが無限測度へ近づいていくことを示し、エネルギーの時間平均がモデルパラメータに応じて、様々な分布へ収束することを解析的に示すことができた。これらの成果は、以下の論文で出版された。 T. Akimoto, E. Barkai, and G. Radons, “Infinite ergodic theory for three heterogeneous stochastic models with application to subrecoil laser cooling,” Phys. Rev. E 105, 064126 (2022).
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、本年度は、1粒子のダイナミクスにおける無限測度エルゴード理論の構築を進めることができた。また、多粒子系のモデルとして、剛体球モデルのシミュレーションコードも作成することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、1次元、2次元の剛体球の衝突シミュレーションコードを完成させている。今後、そこにレーザー冷却のメカニズムを入れたモデルのシミュレーションに取り組む予定である。シミュレーションが完成したら、レーザー冷却モデルにおいて最も重要なパラメータであるジャンプ率を変化させ、運動量分布の時間発展を明らかにする。特に、運動量の定常分布への収束が起こるかどうかを明らかにし、無限測度が現れるか、もし現れるならば、その形状はどうなるかを数値的に明らかにする。また、無限測度への収束の速さも定量的に評価し、多体効果の冷却スピードへの影響を明らかにする。 これまで、1粒子モデルの運動量の時間平均の分布極限定理を様々なレーザー冷却モデルで構築してきた。本研究のモデルの理論的な側面として、今後、1粒子モデルの位置の分布の理論を一般化レビィウォークモデルを基に構築し、それを1次元のレーザー冷却モデルへ1粒子の位置の分布、および、運動量分布へ応用する。さらに、多体系のレーザー冷却モデルの2次元、3次元への拡張を行う。
|