研究課題/領域番号 |
21K03397
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 大阪大学 (2022-2023) 東京大学 (2021) |
研究代表者 |
赤井 久純 大阪大学, 大学院工学研究科, 招へい教授 (70124873)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 電子フォノン散乱 / 電子マグノン散乱 / 電気伝導度 / 線形応答理論 / 第一原理計算 / KKR-CPA / 有限温度輸送現象 / 有限温度磁性 / 光学伝導度 / 有限温度電子輸送 |
研究開始時の研究の概要 |
完全結晶における有限温度の電子輸送現象に関しては電子フォノン散乱および電子マグノン散乱が本質的である。不規則性や界面等を必然的に含む現実物質においても、これらの散乱が輸送現象の温度依存性の主要な要因となっている。本研究においては、フォノンおよびマグノンによる電子散乱効果を取り入れた第一原理電子状態計算に基づき、電気伝導およびゼーベック効果、スピン分極電気伝導、スピン・ゼーベック効果を含む電子輸送現象を定量的に評価する。以上の研究は線形応答理論(久保・グリーンウッド公式)をグリーン関数法による第一原理電子状態計算(KKR-CPAグリーン関数法)に適用してなされる。
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研究実績の概要 |
有限温度における電子輸送現象を決めているのは,欠陥などの不規則性に由来する散乱以外にフォノンによる電子散乱および磁性体においてはマグノンによる電子散乱がある.本研究はこれらの効果を全て取り入れた理論と手法を構築し,KKRグリーン関数法に基づいた第一原理計算コードにこれらの手法を導入することを目的としている.本年度において,温度を与えれば,任意の系について上記の効果を取り入れた磁性および電子輸送現象を自動的に計算するフレームワークを構築・開発した.本フレームワークでは以下の計算を実行する. (1)与えられた温度のもとでの系の各構成原子の平均二乗変位をデバイ・モデルに従って決定する.(2)各原子の変位を取り入れて電子・フォノン散乱を考慮した電子状態を計算する.(3)同時に,マグノン励起(励起マグノン数)を仮定して,フォノン及びマグノン励起が存在する電子状態における磁性イオン間の磁気的相互作用を記述する低エネルギー有効ハミルトニアンを構築する.(4)構築された有効ハミルトニアンを用い,有限温度におけるマグノン励起を統計力学的手法を用いて計算する(現段階では簡単のため分子場近似を用いる).(5)初めに仮定したマグノン励起の数と得られたマグノン励起が一致するまで(3)と(4)からなるループを繰り返す. 上記(1)から(5)までの計算を実行することにより,マグノン・フォノン散乱の効果を取り入れた有限温度の磁性及び電子状態を計算することができた.さらに得られた電子グリーン関数を用いて線形応答理論およびKKR-CPA法を組み合わせることによって電子輸送を計算することができるシステムを構築した. 開発したシステムを用いて,純鉄やCo2MnSIの有限温度電子輸送現象の計算を実施し,磁性および電気伝導度の実験的な温度変化を良く再現することを確認するとともに,温度変化を支配する機構について考察を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
個人的理由により一定期間の研究の遅滞を余儀なくされたため,本研究で開発された手法を用いた応用研究が十分になされなかった.また,成果に関する論文の執筆開始が遅れた.
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今後の研究の推進方策 |
(1)有限温度から温度を下げていったときに,絶対0度極限においてわずかではあるが解に不連続が生じる現象が見られる.計算の枠組みから見てその理由は明らかにはなっているが,理論の枠組みとしてどのような変更によってこの問題が避けられるかを検討する. (2)磁性を示す純物質および不規則合金系について,幅広く有限温度の磁性と輸送現象の計算を行い,開発された手法の正当性と有効性を検証する. (3)第一原理計算にもとづいて低エネルギー有効ハミルトニアンを構築して有限温度磁性を計算している.この枠組みについては厳密な定式化はなされていない.その妥当性をさらに吟味し理論の深化をはかる. (4)フォノンのモードに関してデバイ近似を用いており,さらに合金系については平均的なデバイ温度を導入して計算をすすめている.これは多分に便宜的な方法であり,さらに説得力のあるフォノンモードの導入の方法を開発する.
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