研究課題/領域番号 |
21K03415
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 (2022-2023) 東京大学 (2021) |
研究代表者 |
阪野 塁 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特任講師 (00625022)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 量子ドット / 近藤効果 / ベル相関 / 量子エンタングルメント / 多体相関 / 超伝導 / ナノデバイス / 量子輸送 / 量子多体効果 / 局所フェルミ流体 / 輸送現象 / 量子干渉効果 / 量子もつれ / メゾスコピック / 多体効果 |
研究開始時の研究の概要 |
メゾスコピック複合系でおこる量子多体効果の励起状態や量子もつれなどの動的特性の解明し、それらを電流や電流ゆらぎなどの輸送特性を用いて検出するための物理系をデザインすることが本研究の目的である。場の理論や完全係数統計、ベルの不等式などの理論手法を用いて、多体状態の励起の散乱や量子もつれ特性を明らかにする。近年、ナノデバイスの量子状態制御技術は需要の増大に伴い大きく向上している。国内外の理論グループ、実験グループと協力し、これまで観測が難しかった量子多体効果の新しい特性を検証するための理論を構築する。
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研究実績の概要 |
量子ドットのスピン近藤効果による電流と電流ノイズの磁場依存性とそこに現れる多体相関について、理論と実験の両面から明らかにした。具体的に電流ノイズのバイアス電圧依存性の線形項と非線形項に分けて、そこに現れる局所フェルミ流体特性を明らかにした。これらの輸送係数の近藤効果に普遍的な磁場特性を、近藤模型の厳密解やアンダーソン不純物模型の数値繰り込み群を用いて明らかにした。実験はカーボンナノチューブ量子ドットと希釈冷凍機を用いて、極低温での電流ノイズ特性を調べて、理論解析と比較を行った。その結果、実験観測された電流ノイズの磁場依存性に実際にスケール普遍な特性が現れることを初めて明らかにすることに成功した。また、線形電流ノイズの磁場依存性を表現する経験則式を開発し、実験データから、近藤温度をきめ、さらにバックグランドのノイズを検出する新しい方法を編み出した。この結果は2024年3月のアメリカ物理学会と日本物理学会において発表した。 軌道近藤効果による量子ドットを流れる電流の非線形電流特性について調べた。特にリードとドットの左右の結合非対称が観測に与える影響を詳しく調べた。この影響は価数揺動領域や磁場を印加した場合など、電子相関が抑制される過程で顕著になることを明らかにした。この結果は2023年7月に論文発表を行った。 また、電荷フィルターのないクーパーペアスプリッタを用いた量子エンタングルメント生成の性能評価のための研究を行った。ここでは非平衡グリーン関数を用いて定式化を行い、電流中に含まれる、分離したエンタングルメントペアの割合を電流ノイズの観測から決める手法を開発した。この結果は2023年9月に、日本物理学会において発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
電荷フィルターを持たないクーパーペアスプリッタの非平衡グリーン関数を用いた定式化に成功し、デバイスの性能を評価するうえで重要な、分離されたベル相関対の生成効率について明らかにすることができた。この結果は既に2023年9月の日本物理学会に於いて発表された。 また、前年度から継続してきた量子ドットの線形電流の磁場依存から簡便に近藤温度を決める手法についての研究成果は、2023年7月にフランスでの国際会議EP2DSにて発表を行った。この成果は更に11月にPhysical Review B誌に掲載され、優れた論文としてEditor's suggestionsに選ばれた。この研究の発展として、近藤効果による非線形電流ノイズの磁場依存性に現れる3体相関やスケーリング普遍特性について、明らかにし、2024年3月にアメリカ物理学会と日本物理学会に於いて発表した。 また、軌道近藤効果における、3電子の相関までの多体相関の影響についての論文も2023年7月にPhysical Review B誌に掲載された。 この様に多くの研究成果が上がっていて、現在も発展中であるため研究期間を延長し、これらの成果の取りまとめについて取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長したため2024年度が本研究の最終年度となる。本研究課題中で発展中の研究について取りまとめて論文や学会での成果を発表していく予定である。 具体的には次の3つの研究課題を推進する。量子ドットでの近藤効果に寄る電流ノイズの磁場依存性をとりまとめ論文発表を行う。そして電荷フィルターを持たないクーパーペアスプリッタについての学会発表、論文発表に向けて研究を推進していく。また、カーボンナノチューブ量子ドットでの磁場下での軌道近藤効果の研究についても推進していく予定である。
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