研究課題/領域番号 |
21K03428
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
鈴木 はるか (丹治はるか / 丹治 はるか) 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 准教授 (40638631)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 単一光子 / 光共振器 / リュードベリ原子 / 冷却原子 / 量子光学 |
研究開始時の研究の概要 |
近年発展が目覚ましい量子情報や量子計測などの量子技術においては、量子力学的に特異な性質を持つ光(量子的な光)が重要な役割を担う。そこで本研究では、絶対零度近くまで冷却された気体原子を用いて、量子的な光の最小単位である単一の光子の高効率な生成を目指す。このようにして生成された単一の光子は原子と相互作用しやすい性質を持つため、原子への光の量子状態の保存をはじめとした量子技術への幅広い応用が期待される。
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研究実績の概要 |
近年発展が目覚ましい量子情報や量子計測などの量子技術においては、量子もつれ状態や光子数状態などの量子力学的に特異な性質を持つ光(量子的な光)が重要な役割を担う。そして、このような量子的な光と物質のコヒーレントな相互作用により、光の量子状態の保存や量子的な光同士の非線形な相互作用も実現するなど、量子技術の応用の幅が大きく広がる。 最近、気体中性原子系は実用的な物質量子系として改めて脚光を浴びつつある。このような中で、原子系を用いた量子基盤技術をさらに発展させるために、原子系に適合する量子的な光の高度な生成・制御技術の必要性が増している。そこで、本研究では、高励起状態であるリュードベリ状態に集団的に励起された原子からの光の放射の増強と、光の放出の光共振器による増強効果を併用することで、高純度かつ高い同一性を備えた、原子系に適合する単一光子の高効率な生成を目指す。 本研究においては、高効率に単一光子を発生させるために、リュードベリブロッケード効果が有効な微小領域内に捕捉された冷却原子を用いたリュードベリ集団励起状態の生成と、光共振器による単一光子の単一モードへの放出確率の増大という二つの要素を実現する必要がある。令和5年度には、リュードベリ集団励起状態の生成に向けて、冷却原子集団中の原子数の冷却光周波数依存性の測定および、原子集団のリュードベリ状態への励起に用いる光源の最適化を行った。また、原子の内部状態の初期化のための光学系の構築に着手した。さらに、光共振器中での原子集団の捕捉のための光双極子トラップの設計も行った。また、単一光子の観測に向けては、光学系および光子統計解析システムの構築を行った。さらに、共振器ミラーの特性の再評価を行うとともに、共振器安定化のための周波数基準を与えるレーザーの安定化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度には、リュードベリ集団励起状態の生成に向けて、冷却原子集団中の原子数の冷却光周波数依存性の測定および原子集団のリュードベリ状態への励起に用いる光源の最適化を行うとともに、原子の内部状態を初期化するための光学系の構築に着手した。これにより、当初の目的の一つである、πパルスによる二光子リュードベリ励起に大きく近づいた。また、光共振器中での光双極子トラップの設計を行い、これを実装することで光共振器モード中での原子集団の捕捉が可能となる状況となった。さらに、単一光子の観測のための光学系および光子統計解析システムの構築を行うことにより、リュードベリ集団励起状態から発生する単一光子の測定と評価が可能となった。また、共振器ミラーの特性の再評価を行うことにより、実際に実験に用いる光共振器の構築を行える段階に至るとともに、光共振器長安定化に向けて、共振周波数の基準となる波長767 nmのレーザー光源を用いてカリウム原子の飽和吸収スペクトルを観測し、modulationtransfer法を用いてレーザー周波数をカリウム原子の遷移周波数に対して安定化させることに成功した。これらにより、光共振器の真空中への導入と、共振器長の安定化に向けて大きく前進した。 以上により、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、リュードベリ集団励起状態の生成については、磁気光学トラップに捕捉した冷却原子集団に対して、圧縮磁気光学トラップを行い、原子密度10^11/cm^3の実現を目指す。さらに、この原子集団を、リュードベリブロッケードが及ぶ領域である直径8 μm以下の領域に光双極子トラップを用い捕捉することを目指す。また、前年度までにリュードベリ状態に対して安定化させた光源を用いて二光子励起によるリュードベリ励起の観測を目指す。その際、まずは、リュードベリ励起を用いた電磁場誘起透明化の観測を行い、光源が正しい周波数に安定化されていることを改めて確認する。さらに、二光子励起によるラビ振動の観測を行い、二光子ラビ周波数を測定する。 光共振器については、前年度に再評価した共振器ミラーを用いて、実際の実験用の光共振器を構築し、それを真空チャンバーに導入することを目指す。また、前年度に周波数安定化させた共振器安定化用レーザーを用いて原子遷移周波数に対して光共振器の共振周波数を安定化させる。 これらを統合することにより、光共振器モード中において光双極子トラップを用いて原子集団を捕捉し、πパルスによる二光子リュードベリ励起およびそこから発生する単一光子の観測を目指す。
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