研究課題/領域番号 |
21K03436
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
内野 瞬 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 任期付研究員 (80617465)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 量子輸送 / 冷却原子気体 / 量子開放系 / スピン輸送 |
研究開始時の研究の概要 |
冷却原子気体で実現される量子輸送に関わる研究はアトムトロニクスとも呼ばれ、現在、盛んに議論されるようになっている。本研究では、研究代表者が構築してきた輸送理論を発展させることで、非自明なアトムトロニクス現象を明らかにしていく予定である。特に、国内外の実験グループが現在行っている実験と直接関係するテーマを扱うことで、理論的に非自明かつ実験的にも意味のある新奇な量子輸送問題に取り組んでいく。
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研究実績の概要 |
冷却原子気体を用いることで実現される非自明な量子輸送現象に関する研究をおこなっている。今年度は、散逸のある量子ポイントコンタクト系の輸送、弱く相互作用するボース系の超流動・常流動接合、光学スピン伝導率、光共振器中で強く相互作用する2成分フェルミ気体に関する研究で成果を得ることができた。散逸のある量子ポイントコンタクト系の輸送研究では、散逸効果として粒子ロスを想定することでLandauer公式がどのように変更を受けるかを理論的に解析した。Keldysh形式による場の理論的手法や3端子の散乱形式理論を解析することで、粒子ロスのある場合に成立する一般的なLandauer公式を導くことに成功した。弱く相互作用するボース系の超流動・常流動接合の研究では、トンネルハミルトニアン法とケルディッシュ形式を用いることで、系の輸送特性を理論的に解析した。その結果、超伝導体を用いたSN接合とは大きく異なり、非線形な整流効果が得られることを明らかにした。光学スピン伝導率に関する研究では、東京大学と理化学研究所の研究者との共同研究をおこなった。我々は、冷却原子気体の既存の実験手法を用いることで、光学スピン伝導率測定ができることを明らかにした。また、光学スピン伝導率を2成分フェルミ原子気体、スピン自由度を持ったボース・アインシュタイン凝縮体、2成分1次元量子系で計算し、これらの系において本質的な情報を引き出すことができることを明らかにした。光共振器中で強く相互作用する2成分フェルミ気体に関する研究は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の実験グループと共同研究をおこなった。我々は、このような系で生じる光双安定現象を発見し、その振る舞いが原子間相互作用によって大きく変わることを明らかにした。また、系で生じる光双安定現象の振る舞いは、演算子積展開を用いた理論予想と非常に良い一致を示すことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
4つの全く異なる研究で、それぞれ成果が得られたのが大きいと考えている。散逸のある量子ポイントコンタクト系の研究成果はPhysical Review A誌に出版された。さらに、ボース・アインシュタイン凝縮体を用いたSN接合の研究成果は、Physical Review A誌のLetterとして出版され、Editors’ suggestionに選出された。光学スピン伝導率に関する研究成果はPhysical Review Research誌に出版された。光共振器中で強く相互作用する2成分フェルミ気体に関する研究はPhysical Review Research誌に出版された。これら出版済みの成果に加え、現在投稿中の論文も4本あり、今年度も研究が大きく進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず、現在投稿中の論文4本をvisibilityの高い雑誌への掲載を目指す。さらに、散逸のあるメゾスコピック系の超流動輸送の研究や光共振器系の研究に優先的に取り組んでいくことを考えている。
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