研究課題/領域番号 |
21K03437
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿部 和多加 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (00361197)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 水素・水素化合物 / 非調和格子振動 / 高圧 / 第一原理計算 / 水素化合物 / 超伝導 / 格子振動 |
研究開始時の研究の概要 |
水素化合物の高圧実験では、最近、室温に近い超伝導転移温度(Tc)が観測されている。さらに高いTcの可能性を秘めた系であり、理論から新たな超伝導相も探索されている。水素化合物を理論的に扱う際、困難となるのが水素原子核の量子力学的な振動(零点振動)だ。零点振動が大きい系を扱う手法として自己無同着調和近似(SCHA)があるが、ただSCHAは構造決定に利用するには精度に問題がある。本研究では、原子間ポテンシャルの改良等によりこの点を改善し、SCHAによる信頼性の高い超伝導相予測を目指す。
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研究実績の概要 |
高密度水素の構造は、数百ギガパスカル領域においては、これまでも理論から詳しく調べられている。その結果によると、たとえ原子相であっても、固体水素の構造はそれほど単純ではないと考えられている。一方、陽子の零点エネルギー(ZPE)を適切に考慮すれば、単純で等方的な構造が安定化されるとの意見も古くからある。ただいずれにせよ、圧力がさらに増せば、いつかはfcc、hcp、bcc構造のような単純で等方的な構造が現れるはずだ。そのような等方的構造への転移圧を予測するとき、ZPEの非調和性がどのような効果をもつかは、あまりよく調べられていない。このような動機付けから本年度は、self-consistent harmonic 近似(SCHA)を用いることにより、テラパスカル領域における固体水素の構造を、ZPEの非調和効果も含めて調べた。SCHA計算には有効原子間ポテンシャルを用いるが、ここでは原子間ポテンシャルは二体ポテンシャルの和でかけるものと仮定し、第一原理計算の結果を再現するように作成されている。結果、固体水素は約3.9TPa付近で等方的な構造へ転移するとの予測が得られた。またそこでは、5つの等方的構造が、非常に近いエンタルピー(一原子当り0.01eV以内の差)で競合していることも分かった。非調和性を考慮しない場合、等方的構造への転移は2.3TPaという比較的低い圧力で起きる。また、4TPa以上ではfcc構造が特に低いエンタルピーをもち、多数の構造が競合するという状況も起きない。すなわち本研究結果は、ZPEの非調和性がテラパスカル領域の水素の相図に大きな影響を与えること示しており、調和近似を超えた零点エネルギーの扱いが不可欠であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Stochastic SCHA (S-SCHA) のコード開発において、並列化およびセルを含む構造緩和がまだ実用化できていない。また、S-SCHA用の高精度で実用的な有効三体原子間ポテンシャルの作成手法が十分に確立できていない。
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今後の研究の推進方策 |
テラパスカル領域の水素の構造は、本年度通常のSCHAで既に詳しく調べており、二体ポテンシャルで比較的よく原子間相互作用を記述できることも確認している。そこでまず並列計算および構造緩和の機能をS-SCHAコードに導入したのち、テラパスカル領域の水素に適用する。非調和ZPEの効果を含めた構造緩和が、超高圧領域における水素の相図にどのような影響を与えるかを解析する。一方、水素の圧力誘起分子解離が起きると予想されるような、テラパスカル領域よりもやや低い圧力の範囲(500GPa付近)では、三体ポテンシャルの影響が重要になってくる。水素の分子解離をひとつの題材としながら、できるだけ実用的な有効三体ポテンシャルの作成手法を確立する。その後、三体ポテンシャルおよび構造緩和を含むS-SCHAを高圧水素化合物に適用する。
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