研究課題/領域番号 |
21K03444
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
中村 浩次 三重大学, 工学研究科, 教授 (70281847)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 第一原理計算 / 機械学習 / スピン軌道相互作用 / 人工多層薄膜 |
研究開始時の研究の概要 |
第一原理計算と機械学習を用いた人工多層薄膜の材料設計手法を開発し、磁性3d金属やスピン軌道相互作用力の大きい5d重金属・貴金属、酸化物等から構成される様々な人工多層薄膜に対して、スピン軌道相互作用が絡む磁気・伝導・光物性が最大限になる人工多層薄膜を設計するための指針を構築する。また、その応用として、強い垂直磁気異方性かつ低いダンピング定数を持つ人工多層薄膜、電流・熱・光-スピン流の変換効率の高い人工多層薄膜、優れたスピンスイッチング性能を持つ人工多層薄膜、高速移動の磁壁やスキルミオンを示す人工多層薄膜などの材料設計指針も考察する。
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研究実績の概要 |
全電子フルポテンシャル線形化補強平面波法(film-FLAPW法)のプログラム開発を行った。本年度は、スピンホール伝導度、軌道ホール伝導度及びネルンスト伝導度の計算プログラムを第二変分法及び線形応答理論に基づき開発した。特に、本計算ではk積分などの数値計算パラメータに対する大容量計算が必要になることから、該当部分プログラムのMPI並列化を図り、不規則相、不純物、トポロジカル薄膜など数十原子程度以上の系の計算を可能とすることができた。また、第一原理計算によるマグノン分散プログラムの開発を開始した。
単金属系をはじめとし多層膜(Co/5d重金属)や多元系合金(Cu及びNi基)における軌道ホール伝導度と軌道ネルンスト伝導度の計算を、特に軌道流生成の電子論的な原理の解明および生成効率の向上を目的に、種々の物質系の系統的探索を行った。また、二次元物質にも対象を広げ、本年度は、グラフェン/MoS2 ヘテロ構造に対するスピンホール伝導度の計算を行った。ヘテロ構造を形成することにより、スピンホール効果が期待できること、面直方向の電界印加によりスピンホール伝導度をチューニングできることを明らかにした。
人工多層薄膜や界面材料の設計に向けて、第一原理計算の限られた少数データから原子層配列と磁気的性質との関係を探索する材料設計手法を、前年度に引き続き、開発した。これまでのFeCo多層薄膜における原子層配列と磁気モーメント、生成エネルギーの関係の機械学習に加え、本年度は高い垂直磁気異方性と低磁気ダンピング定数を持つ多層薄膜を探索するために、結晶磁気異方性エネルギーとGilbert磁気ダンピング定数のデータ収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究目的を達成させるための第一原理計算手法プログラムの開発を予定通り進めている。本年度は、軌道ホール伝導度とネルンスト伝導度の計算を可能させ、当該部分計算の大容量化・高速化を目的にプログラムのMPI並列化を行った。材料設計手法開発に関しても、ガウスデータ拡張法とアンサンブル学習を取り入れたニューラルネットワークを完成させ、さらに他の学習モデルとして回帰法と符号化法の検討を開始した。第一原理計算の限られた少数データから材料設計を可能とするスモールデータ駆動型材料設計手法の開発の目途が得られている。応用面の材料設計に関しても、Co/Feや3d/5d重金属などの人工多層膜系、合金系(Cu基、Ni基系)などの構造安定性や磁気的性質の予測を進めてきた。以上のことから順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
スピン軌道トルクを求める第一原理計算プログラムを完成させる。酸化物等の強相関系材料では補正(オンサイトクーロン相互作用補正+U等)が必要であることから、現在継続中のパラメータUを自己無頓着に導出する計算プログラムを完成させる。本年度開始したマグノン分散計算のためのプログラム開発を行う。また、人工多層膜以外にも合金系や欠陥を含む界面系の構造最適化の計算手法を検討し、プログラム全体を最適化と並列化を見直す。計算・データ収集の自動化プログラムを完成させる。スモールデータ駆動型材料設計手法の開発を継続し、スピン軌道相互作用が絡む磁気・伝導・光物性を持つ人工多層薄膜の設計のための手法を完成させる。
応用面として、本年度に引き続き、スピン軌道相互作用が絡む磁気・伝導・光物性が最大限になる人工多層薄膜の構造決定(元素種の組合せや積層配列など)を図る。具体的な磁区的性質として、スピントロニクス分野で重要なスピン・軌道磁気モーメント、交換相互作用力、結晶磁気異方性、ジャロシンスキー守谷相互作用力、スピンホール伝導度、軌道ホール伝導度、ネルンスト伝導度、誘電率、光学伝導度、磁気光学カー効果、磁気ダンピング定数、スピン軌道トルク等の物理的性質を検討する。
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