研究課題/領域番号 |
21K03462
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
谷口 淳子 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (70377018)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 低次元量子系 / 1次元系 / 超流動 / 輸送現象 / 臨界速度 / 量子渦 / 1次元量子系 / 朝永-ラッティンジャー液体 |
研究開始時の研究の概要 |
ナノ細孔に閉じ込めた液体4Heは,(擬)1次元系特有の超流動応答を示すことが期待され,近年,実験・理論両面から興味がもたれている.特に,バルク(3次元系)の超流動を崩壊させる素励起であるロトンが,擬1次元系では存在しないという理論予測がなされ,擬1次元系特有の素励起の解明は喫緊の課題となっている.本研究では,臨界速度(超流動が壊れる速度)が超流動を崩壊させる素励起の情報を含むことに着目し,ナノ細孔中4Heの臨界速度を実験的に調べることにより,擬1次元系特有の素励起について知見を得る.
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研究実績の概要 |
本研究課題『擬1次元ヘリウム系における超流動の臨界速度の研究』は,1次元極限近傍の超流動の臨界速度を調べることによって,1次元系特有の量子揺らぎの効果,および素励起について知見を得ることを目的としている.本研究の開始前に,孔径を,超流動流の散逸に主要な役割を果たす量子渦の渦芯の大きさ(0.3 nm)に近づけていく過程で,臨界速度が劇的に減少することが理論的に予想されていた.一方で,実験面では,そのような孔径における超流動流の測定技術はいまだ確立されていない,という状況にあった.昨年度,配向したナノ細孔を内包する多孔質膜を利用することで,初めて孔径3 nmという小さい孔径における直流の超流動流を観測することに成功した.今年度は,測定セルを改良し,固化圧以下の広い圧力範囲(0.1~2.4 MPa)において,系統的に圧力を変化させ,超流動流の温度およびナノ細孔両端における圧力差に対する依存を調べた.その結果,測定したすべての圧力において,超流動流の流速が圧力差に対し,べき乗則に従うことが明らかになった.このようなふるまいは,超流動流の流速はポテンシャル(圧力)差に依存しないという従来のバルク4Heのふるまいとは異なり,ナノ細孔中4Heの1次元性に起因している可能性が示唆された. 今年度の研究成果は,2023年8月に量子流体・固体国際会議(QFS2023)で招待講演を1件,さらに日本物理学会秋季大会にて1件,日本物理学会年次大会にて1件,発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度,径3 nmの細孔中4Heの超流動流の観測に成功したが,測定系が高圧下の測定に耐えられない構造であった.そのため,測定系の改良が必要となり,測定の開始が今年度の後半になってしまった.その結果,測定計画の一部が次年度までずれ込むことになってしまった.一方で,並行して音叉型水晶振動子やねじれ振り子等の実験手法を組み合わせた測定を進めることにより,細孔中の超流動出現についての知見を深めることができた.また,直流の超流動流に測定成果については,国際会議に招待され講演を行った.また,国内学会でも2件発表することができた.これらから,研究はやや遅れていると考える.
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今後の研究の推進方策 |
現在,行っている超流動流の高圧下における測定をさらに進め,加圧下における超流動流の流速に関する相図を明らかにする.並行して,朝永‐ラッティンジャーモデルに基づく1次元系の輸送現象理論を用いて解析を進め,1次元超流動特有のふるまいを明らかにしていく.
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