研究課題/領域番号 |
21K03465
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
藤井 裕 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 准教授 (40334809)
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研究分担者 |
古谷 峻介 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 研究員 (90781998)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 電子スピン共鳴 / 一次元量子スピン系 / 異方的交換相互作用 / ミリ波 |
研究開始時の研究の概要 |
電子スピン同士の相互作用における異方性は、その物質の磁性を決める上で重要なパラメータである。また、スピン同士がある特定の方向に相互作用して鎖状につながったようなモデル(量子スピン鎖)は、超低温域で量子臨界的振る舞いが現れる。本研究は、超低温域での高周波電子スピン共鳴測定から、相互作用パラメータの異方性を評価することができるという新しい手法を提示する。このような評価には大型結晶を要する測定が従来行われてきたが、本研究成果を用いれば小さな結晶があれば異方性が見積られ、低次元量子スピン系のより詳細な議論が可能になる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、S=1/2一次元反強磁性体(量子スピン鎖)において、その量子臨界的振る舞いが現れる超低温域までの高周波電子スピン共鳴(ESR)測定から、鎖内および鎖間の異方的交換相互作用パラメータを評価することができるという新しい手法を提示することである。本研究では異方性主軸と外部磁場のなす角度を制御する必要があるので、小さな結晶で角度を精密に制御した高周波ESR測定を可能にすることを目指している。並行して、共鳴線のシフトや強度、線幅の温度変化について理論解析をすすめている。 当該年度は、希釈冷凍機の冷媒(3He-4He混合ガス)の漏れが発生したために、その対応を行うことを優先して超低温での測定がストップした。そこで、希釈冷凍機ミリ波ESR装置を高感度化するために海外の共同研究者とともに、ヘテロダイン検波方式のミリ波ESR測定システムのセットアップを開始した。すべての導波管を入れ替える必要があったが、作業は8割程度完了した。当初目的の対象化合物CuPzNについて、神戸大学と共同で、室温から極低温までの詳細な測定を行い、これまでに得られていたESRスペクトルの高温での温度変化について定量的データを得た。また、ほかの候補物質を探索するために関連低次元物質の磁気共鳴測定を液体4He領域で行った。 分担者による理論研究においては、昨年度よりさらに発展して、低温における量子スピン鎖モデルを舞台とした量子臨界現象やダイナミクスに関する研究をすすめた。隠れたスピンネマティック液体状態や量子臨界相の対称性による保護に関する知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室温から数10 Kまでの広い中間温度領域においてもスペクトル分裂に温度変化が存在することは、当初予定していなかったものであるが、興味深い発見である。 しかしながら、実験面で、超低温域で試料を角度回転させることの可能な共振器の製作と試験に遅れが出ている。共振器の製作にかなり精度が必要なためである。また、使用予定の希釈冷凍機にトラブルが発生し使用できない状況となっており、早急に修理が必要となっている。具体的には冷媒である3He-4He混合ガスの一部が外部へ漏れてしまい補充が必要であるが、世界的なヘリウムガス逼迫状況のなかで入手できていない。そこで、現有の希釈冷凍機の混合ガスをいったん分留して利用する計画を立てて、新たなガス保管タンクを作製するなどの作業を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
室温から数10 Kまでの広い中間温度領域におけるスペクトル分裂に温度変化について、理論的研究による説明を試みる。 共振器デザインの課題に取り組み、超低温域での望みの磁場角度での測定に目処を付ける。ピエゾアクチュエータは購入できたためこの開発を加速する予定である。いずれも液体ヘリウム4温度での測定が可能になったことを利用して、試験を行う。 あわせて希釈冷凍機の早期復旧を目指すが、混合ガスが不足したり、漏れの原因が完全に取り除けなかったりした場合には、外部との共同研究の可能性も検討する。
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