研究課題/領域番号 |
21K03467
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
大原 繁男 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60262953)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | キラル磁性 / キラル結晶 / 不斉合成 / キラル反強磁性らせん秩序 / 融剤法 / キラル磁性体 / ハニカム磁性体 / 希土類金属間化合物 |
研究開始時の研究の概要 |
結晶キラリティをもつ希土類金属磁性体を研究対象とし、第一に融剤法において左右性を制御した結晶合成手法を開発する。第二に反強磁性的に結合したキラルらせん磁性体の物性研究を行う。希土類金属間化合物におけるキラルらせん磁性体においては、スピン分裂したフェルミ面の自由電子を介して反対称な磁気相互作用が働くと考えられる。この研究は、反対称スピン軌道相互作用が伝導電子を介してどのように磁気相互作用に現れるか、その学理解明をめざすものである。
|
研究実績の概要 |
融剤法におけるキラル結晶の不斉合成方法の開発のために、種結晶添加法、育成温度振動法、超音波印加法を試みた。いずれについても結晶合成の温度条件を最適にすることが必要であり、YbNi3Al9およびその6%Cu置換した物質について、結晶成長温度と融剤の量の関係を明らかとした。温度振動法については、データベースに状態図があり、YbNi3Al9の簿物質といえるYbAl3を用いて、その効果を調査した。 種結晶添加法は、種結晶が溶融せず、かつ、物質構成元素のニッケルが溶け込む適切な育成温度を見いだせず、不斉合成には至らなかった。YbAl3を用いた温度振動法からは、結晶核数の調整は簡単ではないことがわかり、データベースの状態図が正確ではない、あるいは、物質としての過冷却(あるいはその逆の現象)が大きいことが考えられる。一方で、育成時の最高温度あるいは育成に用いる温度範囲が広いほど、大型の結晶になることが明確となった。この観点を用いてYbNi3Al9への6%Cu置換試料について融剤の量を適切にして育成温度範囲を拡大することで大型の結晶を得るに至った。超音波印加は溶融した原材料の混合を目的として装置を作製し、印加ができることの確認に至った。 反強磁性的に結合したキラル磁性体の研究として、GdNi3Ga9の磁気構造を円偏光共鳴X線散乱により観測した。また、NiへのCo置換を行い、その磁性の変化を明らかとした。SmNi3Ga9については質の高い大型の結晶を得るべく、Co置換試料も含めて、合成条件の最適化を試みた。 GdNi3Ga9については成果を取りまとめる段階に至った。SmNi3Ga9については、さらに結晶合成の最適化を進める必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
融剤法におけるYbNi3Al9の不斉合成、すなわち結晶の左右作り分けは、かなり難しいという結論にいたった。一方、育成条件を最適にし、高い温度から広い温度範囲で合成することにより、YbNi3Al9および6%Cu置換試料の大型の結晶が得られること、その際に、温度勾配をつけるとさらに効果があることを明らかにできた。左右の制御をしているわけではないが、大型の単結晶を得るに至り、非弾性中性子散乱へ向けての試料合成が見えてきた。 大型結晶の左右性における課題として、c軸方向への成長中に左右が入れ替わる場合があることもわかった。左右の入れ替わりは結晶中の鬆の上下で観測されることから、さらに育成の条件を整えることで防ぐことができると考えている。そのための一つの手段として、超音波印加により溶融した原材料の混合ができる環境の整備を進めた。 反強磁性的に結合したキラル磁性体であるGdNi3Ga9については、Gdのスピンがハニカムを形成しているc面内で反強磁性的に結合し、c軸方向に非常に長い周期のらせん構造をもつことを明らかとした。SmNi3Ga9についてはCo置換試料も含めて、結晶育成条件を探ったがまだ十分に大きな結晶を得るに至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
YbNi3Al9の合成で得られた知見である結晶育成温度の最適化を、SmNi3Ga9をはじめ、他の希土類元素の場合にも広げてキラル結晶合成を進める。融剤法への超音波印加をその強度を調整しながら行い、鬆の減少につながるかどうか調べる。GdNi3Ga9の物性およびCo置換によるその変化については成果のとりまとめを行う。
|