研究課題/領域番号 |
21K03469
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
青山 和司 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (00623133)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | スピン流 / 相転移 / カイラリティ / 磁気スカーミオン / 輸送現象 / 熱流 / フラストレート磁性体 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、スピントロニクスの分野においてスピン流が注目されています。電荷の移動が電流をつくるように、磁性体(磁石)の基本構成要素であるスピンが時間変化するとスピン流が生じます。最近、スピン流を用いた物性探索も行われるようになってきたことを背景に、基礎理論を構築すべく、本研究では磁性体においてスピンの状態変化(相転移)が生じる際に、スピン流や熱流にどのような影響が現れるのかを数値シミュレーションを用いて明らかにします。
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研究実績の概要 |
令和4年度の主な研究目的は、3次元古典スピン系おける磁気相転移が熱流・スピン流の輸送特性に与える影響を明らかにすることであった。相転移の臨界現象が磁気異方性のタイプによって固有の性質を示すことを念頭に、立方格子上の反強磁性XXZモデルに対し数値シミュレーションを行なった結果、熱伝導率は異方性の有無に依らず相転移温度で明確な異常を示さないが、スピン伝導率にその違いが顕著に現れることが明らかとなった。前者の熱伝導の結果は、過去の実験結果と整合的であり、今回用いた理論手法の有効性を示している。容易軸異方性がある場合にはスピン伝導率は相転移点で弱い異常を示すのみであるのに対し、等方系や容易面異方性がある場合には、温度低下に伴いスピン伝導率は相転移点に向かってべき的に発散することが明らかとなった。これは、スピン偏極に垂直な磁気揺らぎがスピン流の伝導に重要な役割を果たしていることを示唆している。さらに、等方的なHeisenberg系では、スピン伝導率は相転移温度を跨いだ低温側でも依然として発散的であることが数値計算、解析計算の結果から明らかとなった。今後、候補物質RbMnF3でスピン流測定が行われれば大変興味深い。これらの結果は、Phys. Rev. B誌に論文掲載された。
カイラリティ起源の輸送現象の舞台として、ブリージングカゴメ格子J1-J3反強磁性体の研究にも取り組み、ゼロ磁場スカーミオン格子と呼べるトポロジカルカイラル秩序が等方的なHeisenberg系だけでなく磁気異方性がある場合にも安定に存在できることをモンテカルロシミュレーションを用いて明らかにした。さらに、低温カイラル相と高温常磁性相の間にカイラルドメイン相と呼べる中間相が実現することも明らかとなった。本結果は、J. Phys. Soc. Jpn. 誌にLetter論文として掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していたスピン流の伝導率と磁気相転移の相関が明らかになっただけでなく、候補物質も存在するHeisenberg系においては低温反強磁性相でスピン伝導率の発散が継続し得るという顕著な性質を見出せたため。
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今後の研究の推進方策 |
3次元系の磁気相転移と輸送現象との相関は明らかとなったので、今後は、2次元フラストレート磁性体においてカイラリティがスピン流、熱流の輸送特性にどのような影響を与えるかを調査する。後者の舞台として本課題で開拓したブリージングカゴメ格子J1-J3反強磁性体の研究を押し進め、ゼロ磁場および有限磁場下での輸送特性の理解を目指す。
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