研究課題/領域番号 |
21K03479
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 哲也 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任准教授 (40610027)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 転写制御 / 転写凝集体 / エンハンサ / リピート配列 / 転写ダイナミクス / 新生RNA / 核小体 / eRNA / RNA合成酵素 |
研究開始時の研究の概要 |
遺伝子は、転写活性化因子とRNAの凝集体(転写凝集体)によって活性化される。スーパーエンハンサと呼ばれるDNA領域は、遺伝子を凝集体にアンカリングすることによって遺伝子を活性化することが実験的に示唆されている。本研究課題では、エンハンサが生成するRNAとRNA合成酵素の鎖状部位が転写凝集体の形成の鍵となるという最近の実験結果を参考にして、申請者がこれまで構築してきた転写によるRNAの生成が誘起する相分離の理論を拡張することによって、①スーパーエンハンサが転写凝集体を形成する物理的機構と、②転写凝集体の形成・消滅ダイナミクスと転写活性化機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
スーパーエンハンサは、エンハンサが高密度に集積したゲノム領域である。スーパーエンハンサは、転写凝集体に局在化することが最近の実験によって示されている。一方、分裂酵母のゲノムにタンデムにリピート配列をknock inすると、その配列がRNAi経路によってヘテロクロマチン化されることが最近の実験によって示されている。RNAi経路に必要なdicerは核膜表面に局在化することが示されているため、スーパーエンハンサが転写凝主体表面に局在化するように、同様な性質を持ったゲノム配列が集積すると、凝集体や核膜などの構造体の表面に吸着しやすいという性質があるようである。この性質は、高分子の表面吸着の問題と類似している。高分子の吸着性は、連結性のために、あるモノマーが表面に吸着すると、他のモノマーも表面付近に閉じ込められることによる。そこで、RNAi経路の反応速度方程式に高分子の連結性を組み込むことによって、RNAi経路によるヘテロクロマチン形成のモデルを構築した。その結果、リピートされる遺伝子の数だけでなく、遺伝子の長さ(正確には転写伸長時間)もヘテロクロマチン形成の重要なパラメータであり、転写伸長時間を長くすると、ある閾値で非吸着状態から吸着状態にジャンプ(一次相転移)することが示された。この結果は、ゲノムの核内構造体への安定的な吸着のためには、吸着性を持った配列がリピートしている必要があることを示唆している。来年度には、この研究で得た知見を転写凝集体に拡張し、転写凝集体による転写制御機構を明らかにするための理論を構築する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分裂酵母でタンデムにリピートされた遺伝子がヘテロクロマチン化されてしまう現象は、スーパーエンハンサが転写凝集体表面に吸着する現象と本質が類似している。本研究は、その現象を発見した村上教授(北大)との共同研究で行ったため、地に足の着いた議論をすることができて、思わぬ方向で研究が進んだため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、スーパーエンハンサによって安定化された転写凝集体の研究が思わぬ方向性で進んだ。来年度は、エンハンサによる転写凝集体形成と転写制御の本質に迫るために、該当実験を行っている深谷教授と共同研究を行い、地に足の着いた理論構築を行う予定である。
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