研究課題/領域番号 |
21K03487
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
冨樫 祐一 立命館大学, 生命科学部, 教授 (50456919)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 熱伝導 / 熱伝達 / 生体高分子 / 生体膜 / 超分子混雑 / 分子構造動態 / 分子動力学計算 / 構造モデリング / シミュレーション / 細胞内環境 / 高分子構造 / 生物物理 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、生きた細胞の中の温度が計測されるようになり、例えば核の温度は細胞質より約1℃高いといった報告がなされている。一方で、1℃も温度差を生ずるには核の周りに非常に良い断熱材が必要で非現実的だとの批判もあり、論争が続いている。細胞の中は、複雑な膜構造があったり高分子で混雑していたりするため、熱がどのように伝わっていくのか、分子の構造が変わって熱を溜めることはないのか、そもそも「温度計」は何を測っているのか、といったことが自明ではない。そこで本研究では、分子シミュレーションを用いることにより、細胞の中の環境が熱の伝わり方に与える影響を、実験では測ることの難しい分子のレベルで考察する。
|
研究実績の概要 |
本研究では、混雑環境下における生体高分子の温度・熱に対する応答を分子動力学計算を用いて解析することにより、細胞内の分子環境が伝熱過程(熱伝導・熱伝達)に与える影響を明らかにすることを目的としている。1. 細胞内の高分子混雑環境下での伝熱の様相(分子内・分子間での熱伝導・熱伝達や、配向・複合体形成などの影響)、2. 個々の生体高分子自身の構造転移(熱・温度に依存した構造変化、相転移・相分離など)、の両者が対象であり、相互の関連を視野に入れつつ、現時点では別々に研究を進めている。 1に関連して、前年度より、現実の細胞に即したモデル構築に向けた補助的なテーマとして、3次元電子顕微鏡による細胞構造データ(研究協力者より提供)の定量的な解析や特徴抽出を進めている。機械学習による解析の自動化・精度向上が進み、今年度はまず手法・技術的側面について成果を発表することができた(論文1報を投稿準備中)。核膜などの微細な膜構造に対しても適用し、粗視化モデルの構築に役立てる予定である。伝熱過程そのものの微視的なシミュレーションに関しては、脂質2重膜を介した異方的な熱伝導・熱伝達に着目し、脂質分子の構造変化を含めた様相の全原子分子動力学計算による解析を試みた。現在、アーティファクトを回避するため、同じモデルを用いつつ熱流に関して別種の解析方法を検討している。この伝熱解析手法や実験データ解析との関係については、研究集会「Biothermology Workshop 2023」を主催するなど情報収集・交換を行っており、今後、実装に反映する。2に関連した、温度による構造変化の生理的意義が示唆されているタンパク分子での構造転移については、引き続きアミロイドβタンパク質についての考察を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響による共同研究や研究会開催への支障が概ね解消し、遅れを取り戻しつつある。微視的な伝熱過程の解析に関して問題が生じ、研究協力者の協力を仰いでいる状況である一方で、前年度より進めている粗視的な細胞モデルの構築については想定以上に進んだ部分もある。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、脂質2重膜構造を含むモデル系の改良、細胞構造データの解析とモデル系への反映を進める。伝熱解析に関しては、開発者の協力を得て別種の手法の導入を進めており、これにより問題の解決を図る。共同研究者による実験との比較を通じてモデル系や条件設定を見直しつつ解析を進める。
|