研究課題/領域番号 |
21K03493
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
鈴木 健太郎 神奈川大学, 理学部, 教授 (60512324)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 走光性 / 油滴 / 界面活性剤 / ケージド化合物 / ジャイアントベシクル / 物質輸送 / ベシクル輸送 |
研究開始時の研究の概要 |
袋状の分子集合体「ジャイアントベシクル」の内部に、照射された紫外線の方向に自ら動く「走光性油滴」を封入し、この油滴の作用によってベシクル全体が能動的に駆動する「動くベシクル」を構築する。さらにこの動きを利用した、物質輸送を行う。外部から照射する紫外線の向きや強度によってベシクルの運動(方向、速度)を制御し、目的の位置付近まで移動させる。さらに、強い紫外線を照射することでベシクル膜を壊すことで、目的位置での内容物放出を行う。この一連のダイナミクスの観察を通じて、内部油滴上で起こる化学反応がベシクル全体に駆動をもたらす機構の解明を行い、本手法による物質輸送の効率化、最適化を行う。
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研究実績の概要 |
内部に様々な溶液を封入可能な袋状の分子集合体「ジャイアントベシクル」の内部に、照射された紫外線の方向に自ら動く「走光性油滴」を封入し、この油滴の作用によってベシクル全体が能動的に駆動する「動くベシクル」の構築を目指した研究を進めている。 研究三年目となる2023年度は、可視光によって駆動性を示す油滴を構築するために必要な、新しいケージド脂肪酸の合成を行った。光解離性保護基として、従来用いてきたベンジルアルコールから、可視光領域に吸収を示す誘導体の作りやすいクマリニルメタノールを用いた。光分解後に疎水基となる長鎖アルキル部位にオレイル基を用いた分子では、室温以下の融点を持ち、他の液体分子を混合することなく油滴化できることが確認された。さらに、キセノンランプで、波長400 nm以上の白色光を照射したところ、明確な走光性を示すことが確認された。吸収波長の異なる二種類のケージド脂肪酸を得たことで、それらからなる油滴を共存させた条件での実験を行ったところ、光の波長によって駆動を示す油滴を制御できることを確認した。このことから、本研究の目的である、走光性油滴で物質輸送を行う際において、運度に多様性を与えられることが期待される。 また、意味のある物質輸送を行うために、紫外線光源の状態変化による運動制御に関する研究や、それら運動性をデモンストレーションするための微小流路構築の研究もすすめ、それぞれ一定の成果が得られつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度提案した今後の研究推進方策に従って、新しいタイプのケージド脂肪酸を作ることを中心とした実験を行った。従来の光解離性保護基であるニトロベンジルアルコールと比較して、より暈高いクマリニルアルコールを用いることで、分子間相互作用が増大し、油滴構築の際に問題となり得る低融点で室温固体の化合物が得られてしまう可能性があったが、実際に合成を行って得られた化合物は室温で油状物であったため、この問題は回避された。 今後は、この新しく得られた化合物を基盤とし、さまざまの波長域で走光性を示す油滴を構築し、ただ動くだけでなく、意味のある物質輸送が行える系へとつなげていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、動くベシクルの完成に繋がる研究を行う。引き続き、新しいケージド脂肪酸の合成を行うとともに、より効率性の高い輸送系の実現を目指す。当初計画していたベシクル内部に油滴を封入する方法では、ベシクルの輸送が行えることは確認できているが、再現性や、駆動効率に問題がある。そこで、ベシクルを直接動かすことにこだわらず、ベシクルが分散した溶液自体を動かす方法も活用し、本研究の中心的目的である、「走光性油滴でベシクルを動かす」を実現したい。 これに加えて、構築した輸送系の特色を活かすため、本系に適合した微小流路などの計測系の開発も同時に進める。
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