研究課題/領域番号 |
21K03501
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14010:プラズマ科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
寺坂 健一郎 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (50597127)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 部分電離プラズマ / 静電イオンサイクロトロン波 / ECRプラズマ / レーザー誘起蛍光ドップラー分光法 / 光渦ビーム / 中性粒子 / 静電波 / 中性音波 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,部分電離プラズマ中の中性粒子の流体運動がプラズマ波動特性に与える影響を実験的に明らかにすることである.静電的なプラズマ波動と中性音波間の波動間結合の実験的実証を目指し,部分電離プラズマに関する柔軟な実験が可能なHYPER-II 装置を用い,高精度な時間分解レーザー誘起蛍光ドップラー分光(TRLIF)による中性粒子音波の精密測定を行う.中性粒子の速度分布関数や流速などの時間発展計測によって,中性粒子効果を評価するための完全なデータセットが取得される.本研究は,光科学技術を駆使し,プラズマ状態-気体境界領域におけるプラズマの新しい物理素過程を明らかにする先駆的研究である.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,部分電離プラズマ中の中性粒子の流体運動がプラズマ波動特性に与える影響を実験的に明らかにすることである.特に,中性粒子波動とプラズマ波動間の結合に焦点をあて,イオン音波やイオンサイクロトロン波によって中性粒子音波が励起されること,またその逆過程が存在することを実験的に実証することを目指す.部分電離プラズマに関する柔軟な実験が可能なHYPER-II 装置(九州大学)を用い,高精度な時間分解レーザー誘起蛍光ドップラー分光(TRLIF)による中性粒子音波の精密測定を行う.本申請は,光科学技術を駆使し,プラズマ状態-気体境界領域におけるプラズマの新しい物理的性質を見出す先駆的な研究である.2021年度は, 静電イオ印サイクロトロン波(ECI波)を用いた中性粒子効果の実証に関する理論的検証とHYPER-IIにおけるEIC波の励起システムの開発および初期実験を行った. 2022年度は昨年度からの継続として, ECI波の有限中性粒子温度効果について理論的研究を進め,より現実的な環境で原理実証実験が可能であることを示した.実験では,静電イオンサイクロトロン波の伝播に関するパラメータースキャンを行った.また,新しい試みとして光渦を光源とするLIF法(OVLIF法)の導入を検討し,HYPER-II装置を用いて高次光渦を生成した.ここまでに開発したTRLIFシステムに光渦を組み込むことで,波動場中の中性粒子効果をより詳細に調べることが出来るシステムの構築を進めた.更に,中性粒子効果を検証するための波動現象として電離波動を用いた実験を開始した.電離波動が起点となって生じるカオス状態のフィードバック制御システムを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HYPER-II装置におけるEIC波を用いた中性粒子効果の実証実験について,HYPER-IIのプラズマパラメーターと有限中性粒子温度を考慮した理論的検討において,実験の方向性が適切であることが確認できた.波動励起実験では,励起周波数に応じてEIC波の分散関係を示唆する結果が得られており,波動励起という点で本研究は順調に進展していると判断できる.一方,2022年度実施した実験条件では,当初の達成目標である中性粒子効果による固有周波数の低下は確認されておらず,継続した実験が必要な状況にある. 中性粒子効果を一般的に理解するための新しい試みとして,電離波動のカオス現象を用いる実験を新しく検討した.封じきりの簡易実験装置を構築し,カオス状態の発生およびそのフィードバック制御に成功した. 本研究ではプラズマに加え中性粒子を直接計測することで,中性粒子効果を実験的に実証することを目標としている.ここまでに,時間分解能を有するレーザー誘起蛍光ドップラー分光システム(TRLIF)を構築し,HYPER-II装置への実装が完了している.本システムでは100kHz以下の周波数帯に対してコンディショナルサンプリングを用いた中性粒子の速度分布関数の時間発展の追跡が可能で,グリッド励起したEIC波の周波数全域に対してTRLIF計測を適用可能である. 一方,HYPER-IIでの実験では, TRLIF計測のためのレーザー入射が制限を受ける状況が生じた.これを解決するための方法として,ビームを横切る流れ成分に感度を持つ光渦ビームを用いたLIF(OVLIF)法の導入を行った.現在までに,空間光変調器を用いた光渦生成法を採用し,数10m/sの中性ガス流に対して感度を持つOVLIFビームの生成に成功している.ここまでの実験において,計測系の開発については順調に進めることが出来ている.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はこれまでに構築した計測システムを用いて,中性粒子効果によるEIC波の伝播特性の変化を詳細に調べる実験を実施する.中性粒子効果による固有周波数の低下や減衰率の低下を実証するだけでなく,2022年度に新たに導入したOVLIF法を積極的に活用し,波動場中の中性粒子の速度分布関数や流速の時間発展を追跡する.OVLIFを用いた時間分解計測については,これまでのプラズマ研究において報告がなく,派生的に生じた光渦ビームの活用法についても本研究課題の一環として成果を追求したいと考えている. 中性粒子効果の実証実験として,中性粒子に与えた擾乱がプラズマ波動を励起することを実験的に実証する.計画当初は中性粒子の擾乱によってEIC波を励起する計画であったが, グリッドを用いたEIC波の励起実験が継続中であるため,電離波動のカオス状態を用いた実験からこのテーマを進める予定である.中性粒子の音波(中性音波)を励起し,電離波動が応答することを確認し,次に中性音波を用いたカオス状態の制御に関する実験を実施する予定である.現在,電離波動実験は封じきりの放電管で実施しているが,これを中性音波が励起可能な開放系の放電管およびHYPER-II装置へ拡張させ,制御及び計測の自由度の高い実験を実施する計画である.実験の進捗状況によって,中性音波を用いたEIC波の励起実験を実施するなど柔軟に対応し,複数の現象を用いて中性粒子効果を一般的に実証することを目指して効率よく研究を進める予定である. 研究最終年度となる2023年度は,おもにこれまで開発した実験装置の環境維持および微細なアップグレードに予算を使用する予定である.また,得られた成果をまとめ中性粒子の動的振る舞いがプラズマの構造形成や波動現象に与える影響について,論文や学会発表において新しい科学的知見を発振する予定である.
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