研究課題/領域番号 |
21K03503
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14010:プラズマ科学関連
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
實方 真臣 東京工芸大学, 工学部, 准教授 (80277368)
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研究分担者 |
美齊津 文典 東北大学, 理学研究科, 教授 (20219611)
西宮 信夫 東京工芸大学, 工学部, 教授 (50208211)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | マグネトロンスパッタリング / プラズマ診断 / プラズマ分光計測 / 光イオン化レーザー分光法 / 飛行時間質量分析法 / レーザー誘起蛍光法 / 飛行時間型質量分析法 / 2光子共鳴飽和分光法 |
研究開始時の研究の概要 |
高出力パルスマグネトロンスパッタリングは、従来の直流法に比べて多量のスパッタイオンをプラズマ内に生成することが可能となる。スパッタイオン粒子は、密着強度の優れた硬質皮膜の成膜を可能とするため、成膜領域におけるスパッタ粒子内の中性粒子とイオン粒子の絶対密度(濃度)のバランスは、得られる硬質皮膜の膜性能を左右する重要な因子となる。 本研究では、プラズマスパッタ粒子中の中性種とイオン種の絶対濃度の測定を目的として、パルスYAGレーザー光イオン化を用いた飽和分光法と飛行時間型質量分析法を組み合わせた新しいプラズマ分光計測法の開発を行なう。
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研究実績の概要 |
大電力パルスマグトロンスパッタリング(HiPIMS)を含む高出力パルスマグネトロンスパッタリング(HPPMS)の最大の特徴は、プラズマ内におけるスパッタ粒子の高いイオン化率にある。HPPMSでは、プラズマ内に生成した大半(最大約80%)のスパッタ粒子イオンは、引き戻し効果(Back-attraction effect)によってカソード(ターゲット)へ引き戻されてしまう。それにも関わらず、少数成分として生き残り成膜領域に到達したイオン粒子は、イオン粒子特有の回り込み効果によって成膜影(シャドウ効果)を低減させ、より高い平滑性・潤滑性・密着性を有する高機能性コーティング膜の形成を可能とする。したがって、HPPMSにおけるコーティング成膜において、成膜領域に到達するスパッタ粒子イオンの存在量を精度よく把握することは、成膜制御および膜質制御の非常に重要な鍵となる。本研究では、HPPMSで生成する成膜領域における中性スパッタ粒子およびスパッタ粒子イオンの粒子密度の精密計測を目的とした2光子共鳴レーザー光イオン化飛行時間質量分析法による新たなプラズマ診断法の開発を行う。令和5年度は、この新たなプラズマ診断法を確立させるために(1)2光子共鳴法の光路最適化、(2)イオン計測の最適化・高感度化、(3)多成分同時時間分解計測システム開発、(4)レーザー誘起蛍光(LIF)法による成膜領域への到達中性粒子の時間分布観測に関して検討を行い、新たな研究実績を上げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記の(1)から(4)における研究の進捗状況において報告する。 (1)2光子共鳴法の光路最適化:2色2光子共鳴法の信号検出を左右する励起レーザーと光イオン化レーザーのビームの重ね方を、昨年度まで光路セッティングである対向同軸入射から、より簡単にビームの重なりを最適化調整できる同方向同軸入射方式へと改良した。 (2)イオン計測の最適化・高感度化:リフレクトロン型飛行時間型質量分析計の反射面内の偏向電極を最適化された設置位置へ改良した。また、イオン検出の漏れを最小限度に抑えるため、大きな口径を持ったMCPイオン検出器へ改良を行った。有機分子(トルエン気体)の多光子共鳴イオン化法を用いて、飛行時間質量分析計のイオン光学系収束条件の最適化を図り、飛行時間質量スペクトルの分解能およびイオン検出の感度を約1桁向上させた。 (3)多成分同時時間分解計測システム開発:リアルタイム計測性能に優れた飛行時間質量分計の利点を生かした多成分の同時計測および時間分解計測を可能とするシステムを構築した。このシステムを用いて、パルスマグネトロンスパッタリングの時間発展過程の段階的観測に優れた深振動パルスマグネトロンスパッタリング(DOMS)に適用し、電力パルス(マクロパルス)を25本で構成する各変調制御パルス(マイクロパルス)ごとに生成する多成分のイオン粒子(ガスおよびスパッタ粒子イオン)の時間発展過程の同時観測に成功した。 (4)LIF法による成膜領域での中性粒子の時間分布観測: LIFの観測実験を通じて、大きな遷移強度を持つ1電子許容遷移ではLIF観測の障害となる強い共鳴散乱光を伴うため、2電子禁制遷移からなる原子線が最適であると結論された。 これらの結果を踏まえ、2光子共鳴イオン化過程の様々な遷移の中で、イオン検出に適した最も効率の良い遷移の検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
スパッタ粒子(Ti)の2色2光子共鳴レーザー光イオン化法では、LIFの観測によって原子線に共鳴励起させるレーザー発振波長を決定する。その際、LIFの観測は、共鳴散乱光の強度を抑えるために1電子許容遷移ではなく、2電子禁制遷移からなる原子線を用いることが実験的に有利となる。このことは同時に、共鳴励起状態において、競奏的に蛍光緩和過程が小さく抑えられる分、飽和吸収過程および2光子目の光イオン化過程にとって、有利な条件を兼ねることを意味する。本研究の最終年度の前半は、スパッタ粒子(Ti)の2色2光子飽和共鳴光イオン化に対して効率のよい電子遷移に適った原子線の検討を行う。年度後半で、スパッタ中性粒子(Ti)に対して、2波長2光子共鳴飽和光イオン化レーザー分光法によって、スパッタ粒子の密度計測法を確立する。次に、中性粒子の場合と同じ基準でスパッタ粒子イオン(Ti+)の共鳴原子線を選定し、2波長2光子飽和共鳴光イオン化レーザー分光法を行い、スパッタ中性粒子の粒子密度との相対比を測定し、スパッタ粒子イオンの粒子密度を計測する予定である。
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