研究実績の概要 |
大型ヘリカル装置(LHD)における高ベータプラズマでの圧力勾配駆動型磁気流体力学(MHD)不安定性に対する、熱イオン、及び、高速イオンの運動論的効果の影響について調べた。本解析においては、中心ベータ値が7.5%のMHD平衡に対して、熱イオンの運動論的効果のみを考慮した運動論的MHDシミュレーション、及び、熱イオンと高速イオンの両方の運動論的効果を考慮した運動論的MHDシミュレーションを実施し、両者の結果を比較することにより、高速イオンの運動論的効果が、圧力勾配駆動型MHD不安定性の非線形飽和状態に及ぼす影響を調べた。解析に用いたMHD平衡では、高磁気レイノルズ数において、(m,n)=(3,2)のインターチェンジモードが最も不安定となる。ここで、m, nは、ポロイダルモード数、トロイダルモード数である。高速イオンの運動論的効果を考慮する場合は、高速イオン寄与分の中心ベータ値を0.8%と仮定した。高速イオンを考慮しない場合と比較して、高速イオンを考慮した場合の(m,n)=(3,2)モードの線形成長率は70%に低下する。しかしながら、非線形シミュレーションの結果、(m,n)=(3,2)モードの飽和レベルは、両結果に大きな違いは生じないことがわかった。また、両結果ともに、(m,n)=(3,2)モードの飽和後に(m,n)=(1,1)モードがゆっくりと成長し、最終的には(m,n)=(1,1)モードが支配的なモードどなること、及び、(m,n)=(1,1)モードの飽和レベルも大きな違いが見られないことがわかった。この解析結果から、解析を行った範囲内においては、圧力駆動型MHD不安定性の非線形飽和状態に対して、高速イオンの運動論的効果の影響は小さいことがわかった。
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