研究課題/領域番号 |
21K03523
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14030:プラズマ応用科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊庭野 健造 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (80647470)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | レーザー / プラズマ / 複合プロセス / 薄膜 / パルスレーザー / 酸化物半導体 |
研究開始時の研究の概要 |
先端デバイスに利用される酸化物半導体(OS)薄膜の成膜法として、高速で高密度成膜が可能なパルスレーザー蒸着法(PLD)が注目されている。本研究では、PLDの課題である膜の非均一性を、背景プラズマを用いた複合プロセスで解決する。背景プラズマ導入により、PLD堆積粒子の運動量を制御し、化学的に活性化できる。複合PLDにおける物理過程を解明し、反応性成膜、ナノ構造直接成膜によるOS薄膜の高品質化、多様化に貢献する。複合プロセスの複雑なパラメータは機械学習により探求し、最適条件を解明する。機能性OS薄膜の高性能化を実現し、革新的新材料創製への波及が期待される研究である。
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研究実績の概要 |
高密度成膜が可能なパルスレーザー蒸着法(PLD)の欠点である形成薄膜の膜厚や組成の非均一性の課題について、背景プラズマを用いた複合PLDでの解決が期待されている。そこで本研究では複合PLDにおける物理過程の解明を目的の1つとした。 本年度はマグネトロンプラズマ源を用いて実験を行った。新たにPLD専用装置を整備し、同装置にマグネトロンプラズマ源を設置し、PLD成膜の背景として従来の中性ガスに加えてプラズマが利用可能となった。同装置を用いてリチウムイオン電池の電極として一般的なLiCoO2薄膜を成膜した。成膜時にPLD及びマグネトロンのターゲット材は両社ともLiCoO2を用い不純物の混入を低減させた。ただし、マグネトロンからの成膜はなるべく生じないようにターゲットに引火するバイアスは最小限に留めた。またスパッタ量を低減させるため、アルゴンガスは使用せず、酸素ガスのみを用いたプラズマを背景とした。LiCoO2膜を1μm程度成膜した試料について、SEM、XPS、XRDなどの分析装置を用いて組成を調べた。さらに得られた薄膜をコインセルに封入し、リチウム電池としての電極性能をサイクリックボルタメトリー及び充放電試験で測定した。背景として酸素ガスを用いたPLDと酸素プラズマを用いた複合PLDにより成膜された薄膜を比較すると、酸素プラズマを用いた複合PLDの試料のほうが良好な結果を示し、電池特性も優れることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
複合PLDによる酸素の供給を用いて、LiCoO2薄膜成膜におけるプラズマの影響が明確に観測できた。結果として複合PLDにより酸化物薄膜成膜時の組成制御が可能になることを確認した。複合プロセスによる組成制御は、薄膜表面にアブレーションプルームが堆積し、表面において結晶成長する際のプロセスに影響を及ぼしている可能性が高い。本研究は同仮説をさらに裏付ける根拠となっている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は背景プラズマ源としてECR装置を用いたが、今年度にはマグネトロンスパッタ装置を利用した新たな複合プラズマ装置の構築に成功している。 マグネトロンからの粒子供給とPLDからの粒子供給を兼ね備え、同時に反応性プラズマを利用する新手法である。組成制御により機能性酸化物半導体(OS)薄膜の高精度化の実現が見込める。本年度はLiCoO2を中心に実施したが、来年度は材料をWなどに変更し、またガス種類、マグネトロンバイアス、PLDレーザーパラメータ(強度、パルス幅、デューティ比)、試料温度(室温~1200℃)を変えた実験を実施する。
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