研究課題/領域番号 |
21K03526
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14030:プラズマ応用科学関連
|
研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
竹田 圭吾 名城大学, 理工学部, 教授 (00377863)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | 大気圧プラズマ / 化学気相堆積 / 金属酸化物 / ミスト原料 / 酸窒化物 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、低温プラズマを用いて高い反応性を有する窒素系ラジカル種を生成・供給する大気圧ラジカル源を開発し、ミストCVDにおける薄膜成長場にそれら窒素系ラジカルを供給することで、従来のミストCVDでは困難であった金属酸窒化薄膜の低温合成を実現する。対象とする金属酸窒化膜は、電子デバイスや発光素子材料として有望とされる酸窒化亜鉛薄膜とし、大気圧ラジカル源から供給するラジカルの種類(窒素原子およびNHxラジカル)やフラックス量を変化させ、成長した薄膜内の窒素含有率やその膜特性に対する影響を明らかにし、大気圧ラジカル支援ミストCVDによる酸窒化薄膜合成と膜特性制御を可能とする技術の構築を試みる。
|
研究実績の概要 |
本研究では、大気圧ラジカル源をミスト化学気相堆積(CVD)に組み合わせ、金属酸化物系薄膜の更なる低温プロセスの実現、更には高機能化薄膜の合成技術の構築を目的としている。これまでに、放電ガスとして窒素・水素混合ガスを用いたAC励起大気圧プラズマ装置をベースとしたラジカル供給装置を構築し、NHラジカルの供給量制御の可能性を見出すとともに、本装置を用いたラジカル支援ミストCVD装置の構築に成功している。またミストCVDで合成した酸化亜鉛(ZnO)膜に対し、上記のラジカル源で生成された活性種を照射することでZnO膜の膜厚減少が確認されている。以上のことを踏まえ、R4年度はミストCVDによるZnO合成時におけるラジカル支援の効果検証を更に行うとともに、その最適化を行った。まず、ラジカル源と成膜基板との距離依存性として、照射距離を10mmから15mm、20mmと変化させて成膜実験を行った結果、10mmの条件下ではある一定以上の温度でエッチング作用の増大により薄膜堆積が生じない部分が確認されたものの、照射距離を増加することでエッチング反応を抑制し、均一な薄膜の合成に成功した。これは照射距離を離したことで供給されるラジカルの種類が変化したためと考えられる。次に、照射距離20mmの下でラジカル支援の効果を検証した結果、窒素水素混合ガスを用いたラジカル源による支援を行うことで、同時間の成膜においてラジカル支援無しの約3倍、窒素ガス単体によるラジカル源の約1.5倍の膜厚が得られ、窒素水素混合ガスを用いたラジカル源による成長支援効果が高いことが確認された。また、ラジカル支援無しで成膜した薄膜と比べ、窒素ガスを用いたラジカル源による支援では欠陥割合が増加するものの、窒素水素混合ガスによる支援では欠陥割合が減少する結果が得られ、供給するラジカル種により欠陥量の制御が可能であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、大気圧ラジカル源をミスト化学気相堆積(CVD)に組み合わせたラジカル支援ミストCVDを構築し、金属酸化物系薄膜の低温合成と高機能化を実現することを目的としている。R4年度においては、アンモニア系ラジカル種の生成・供給を可能とするラジカル源を用いて初年度に構築した大気圧ラジカル支援ミストCVD装置において、ミストCVDによるZnO合成時におけるラジカル支援の効果検証を行うとともにその最適化を実施し、プロセスの低温化および高機能化薄膜合成の可能性について検証した。その結果、ラジカル照射距離を調整することでZnO成膜に影響を与えるラジカル種の反応を制御し、より均一な薄膜を合成することに成功した。さらには窒素水素混合ガスを用いたラジカル源による支援を行うことで、同時間の成膜においてラジカル支援無しの約3倍、窒素ガスを用いたの約1.5倍の膜厚成長が確認され、NH系ラジカルによる成長支援効果が比較的高い結果も得られた。また、ラジカル支援無しで成膜した薄膜と比べ、NH系ラジカルによる支援では比較的低温条件下においても結晶性の向上を示す結果も得られており、アンモニア系ラジカル支援をミストCVDに適用することで、金属酸化物系薄膜の低温合成と高品質化を実現することに成功している。しかし、水素窒素混合大気圧プラズマをラジカル源としたプロセスでは、膜中への窒素の混入は未だ確認されていない。そこで、今後更なるプロセスおよびラジカル生成条件の最適化とともに、使用するガスを窒素酸素混合ガスによるなど、供給するラジカル種を大きく変更させた実験も実施していく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では研究を遂行していくうえでのベースとなる、水素と窒素の混合ガスを用いた大気圧プラズマをベースとしたアンモニア系ラジカル源を備えたミストCVD装置を実現し、1)ラジカル計測技術を基にした構築した大気圧ラジカル源の最適化による供給ラジカルの種類とフラックスの制御、2)ZnO薄膜におけるラジカル表面反応の分析、の2つの研究課題については概ね順調に進んでいる。そこでラジカル源から供給される各種ラジカルの分光計測技術を用いた分析を推し進め、ラジカル源の特性評価に関する実験に従事するとともに装置の最適化およびラジカル表面反応の解析に関する研究を引き続き行う予定にしている。また、現在検証しているNH系ラジカル支援の効果に加え、ミストCVD プロセスに対するNO系ラジカルを用いた反応支援によるZnO薄膜の高機能化についても、新たにNOラジカル源を構築して検証していく予定にしている。以上の研究を通じて、ラジカル源から供給される各ラジカル種による表面反応の理解に努めるとともに、特定の膜特性を有する金属酸化物系薄膜の合成における最適なラジカル種の特定とそのフラックス量の最適化を試みる。そして、ラジカル種のミストCVD反応場への供給が引き起こす膜合成メカニズムを解析し、ラジカル支援によるミストCVD技術の学術的な知見を蓄積しつつ本技術の学術基盤を構築する。
|