研究課題/領域番号 |
21K03528
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小野 章 東北大学, 理学研究科, 助教 (20281959)
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研究分担者 |
池野 なつ美 鳥取大学, 農学部, 講師 (30756086)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 重イオン衝突 / 対称エネルギー / 状態方程式 / π中間子生成 / 輸送模型 / 反対称化分子動力学 / Δ共鳴 |
研究開始時の研究の概要 |
原子核同士の衝突(重イオン衝突)では、例えば通常の約2倍の高密度が実現し、不安定核ビームの利用により陽子中性子の非対称度を変化させることもできる。状態方程式の非対称度依存性(対称エネルギー)は高密度部の陽子中性子比に反映されるが、そこで生じるΔ共鳴を経由してπ中間子が生じる。では、観測されたπ中間子から高密度対称エネルギーを抽出できるのだろうか。これに答えるため、重イオン衝突ダイナミクスとともに、Δ共鳴やπ中間子の媒質中での相互作用を総合的に理解する。手法として、多体系の時間発展を解く輸送模型の中でも優れた特長を持つ反対称化分子動力学を用い、国際的共同研究にも参画する。
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研究実績の概要 |
原子核同士の衝突(重イオン衝突)では、例えば通常の約2倍の高密度が実現し、俯瞰定格ビームの利用により陽子中性子の非対称度を変化させることもできる。本研究では、核子多体系としての運動を解く反対称化分子動力学(AMD)に別の輸送模型(sJAM)を組み合わせる枠組みを用いて、衝突ダイナミクスからπ中間子生成などの観測量までの総合的理解を目指している。 前年度までに、特にNN→NΔ過程における核子(N)やΔ共鳴のポテンシャルが最終的なπ中間子生成に強く影響することがわかっていた。特にAMD+sJAMの計算結果では、核子のポテンシャルの運動量依存性、特に、非対称物質中において陽子ポテンシャルと中性子ポテンシャルの運動量依存性が異なる効果が、最終的な荷電π比(π-/π+)に激しく影響する。これは、高密度対称エネルギーの効果やΔのポテンシャルの効果より遥かに大きい。今年度は、NN→NΔ断面積のポテンシャル依存性を定量的かつ定性的に分析し、π-/π+に現れる強い効果がNN→NΔ断面積を直接反映したものとして理解できることを確認した。結果はPhysical Review C誌、および国際学会等で発表した。 さらに、これまで無視してきたπ中間子のポテンシャルを取り入れた計算に着手した。N、Δ、πのポテンシャルをNN→NΔ、NΔ→NN、Δ→Nπ、Nπ→Δのすべての過程に無矛盾に取り入れるのが本研究の特色であるが、まずはπのポテンシャルの運動量依存性として扱いやすい形を仮定して計算を行った。これまでのところ、Δ→Nπ過程と生成後のπの加減速の両方にポテンシャルを考慮すれば、πのポテンシャルがπのスペクトルに及ぼす影響は比較的穏やかなようである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたAMD+sJAMでの研究は概ね実施できており、さらにπ中間子ポテンシャルを導入するところまで進展している。輸送模型評価プロジェクト(TMEP)における箱の中のNΔπ系についての模型コード比較について、結果の取りまとめがやや停滞している。
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今後の研究の推進方策 |
π中間子のポテンシャルについて、本研究ではこれまで扱いやすい運動量依存性を仮定していたが、ポテンシャルを部分的に取り入れた先行研究では複雑な運動量依存性を用いたものもある。より現実的な計算のため、および先行研究との比較のため、πの任意の運動量依存性を用いてNN→NΔ、NΔ→NN、Δ→Nπ、Nπ→Δのすべての過程を一貫して扱えるよう、理論と計算アルゴリズムを完成させ、計算を実施する。
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