研究課題/領域番号 |
21K03532
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
土屋 麻人 静岡大学, 理学部, 教授 (20294150)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 超弦理論 / 行列模型 / 創発する時空 / Berezin-Toeplitz量子化 / 共変微分解釈 / ゲージ重力対応 / くりこみ群 / 量子誤り訂正 / cMERA / 厳密くりこみ群 / 創発される時空 / 標的空間エンタングルメントエントロピー / テンソルくりこみ群 |
研究開始時の研究の概要 |
超弦理論は量子重力を含む統一理論の最有力候補であるが、現在摂動論でしか定義されておらず、摂動論的に(準)安定な真空は無数に存在し、また宇宙の始まりにおいて摂動論は無力である。超弦理論の真の真空を決定し、初期宇宙論の研究につなげるためには、超弦理論の非摂動論的定式化を構築し、その非摂動ダイナミクスを理解する必要があるが、行列模型はそのような非摂動論的定式化を与えると期待されている。本研究は、解析及び数値的手法を用いて、行列模型において時空が創発される機構を明らかにすることにより、行列模型による超弦理論の非摂動論的定式化を完成させ、そこから創発される時空の性質を明らかにすることを目的とする。
|
研究実績の概要 |
IIB行列模型は超弦理論の非摂動論的定式化を与えると期待されている。この模型においては、時空はアプリオリには存在せず、行列の自由度から創発する。この模型の数値シミュレーションには、符号問題が存在する。ここでは、符号問題を解決するために複素ランジュバン法を用いてシミュレーションを行った。複素ランジュバン法が有効であるために、フェルミオンの質量項を導入する必要がある。ここでは、これに応じてボソンの質量項の係数を調整し、超対称があるときに近い状況が実現することにより、3+1次元の膨張する時空の創発が観察された。 IIB行列模型がIIB行列模型は超弦理論の非摂動論的定式化を与えるとすると、重力を含むので、曲がった時空がそこで記述されなければならない。共変微分解釈はこれを可能にするが、行列を微分演算子とみなすので行列サイズが無限大であり、量子論的な計算が難しい。ここでは、2次元時空の場合に共変微分解釈において、Berezin-Toeplitz量子化を用いて行列を有限サイズに正則化した。 ゲージ重力対応においても空間が創発されるが、この機構を明らかにすることで行列模型による幾何の記述への知見が得られると考えられる。ゲージ重力対応においては、境界上の場の理論のくりこみ群のスケールがバルク方向に対応する。また、バルクの演算子を境界上の場の理論の演算子で表現するとき、量子誤り訂正の構造が必要である。これらを動機として、ここでは、スカラー場理論において、くりこみ群によって量子誤り訂正が実現されること見た。この結果は、くりこみ群と量子誤り訂正の間の一般的な関係を示唆し、ゲージ重力対応におけるそれらの役割に対して知見を与えると期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IIB行列模型の数値シミュレーションについては、テクニカルな理由から模型の質量項による変形をしているが、3+1次元の膨張する時空が出現が観測された。また、行列模型における曲がった時空の記述については、共変微分解釈においてBerezin-Toeplitz量子化を用いて行列の有限サイズへの正則化を行い進展している。さらに、くりこみ群による量子誤り訂正の例を構築することにより、ゲージ重力対応における時空の創発の理解を進め、行列模型における時空の創発への知見を得る準備ができた。
|
今後の研究の推進方策 |
IIB行列模型の数値シミュレーションについては、行列サイズを大きくして、模型の変形を小さく抑える方向へ推進していく。行列模型における曲がった時空の記述については、3次元以上の場合に共変微分解釈における行列正則化を探求する。また、くりこみ群を量子誤り訂正の一般的な関係の確立を目指す。
|