研究課題/領域番号 |
21K03533
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 崇城大学 (2023) 名古屋大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
田代 寛之 崇城大学, 総合教育センター, 准教授 (40437190)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 原始密度ゆらぎ / 宇宙マイクロ波背景放射 / 構造形成史 / 宇宙背景放射 / 宇宙構造形成史 / 初期密度ゆらぎ / 電波天文学 / 宇宙物理 |
研究開始時の研究の概要 |
近年の宇宙観測の発展により、銀河や銀河団等の初期条件である原始ゆらぎが明らかになりつつある。しかし、銀河スケール(1Mpc)以下の小スケールの原始ゆらぎは依然として未知である。そこで本研究では、2020年代に稼働予定のSquare Kilometre Array (SKA) を始めとする大型電波望遠鏡観測による小スケールの原始ゆらぎ探査について研究する。大型電波望遠鏡観測により、小スケールの原始ゆらぎによる構造が卓越している宇宙初期の構造形成が初めて探査可能となる。そこで小スケールの構造からの電波シグナルを理論予言し、SKA時代の小スケール原始ゆらぎの測定に備える。
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研究実績の概要 |
本年度は、主に超小型ダークマター天体の一つである、超コンパクトミニハロー(UCMH)の存在量に関する制限の研究を行った。このUCMHは宇宙初期に生成される高密度小型ダークマターハローである。その存在量は、原始密度ゆらぎの大きさと関連しており、とくに本研究課題の主題である1Mpc以下の小スケールゆらぎを起源に生成される。したがって、1Mpc以下のゆらぎに対する知見を得るためにも、このUCMHの存在量をさぐることが大きな鍵となっている。 このUCMH探査方法として、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)における重力レンズ現象に注目した。まずUCMHによるCMB重力レンズ現象をモデル化するために、数値シミュレーションによって明らかにされたUCMH密度モデルを採用し、UCMHの起源となる原始密度ゆらぎの大きさ等の統計的情報と重力レンズ現象の大きさや特徴的なスケールの関連性を明らかにした。 またこの結果を利用して、CMBにおけるUCMHの重力レンズ効果の影響を調べた。その結果、UCMHの存在量とCMB重力レンズ現象の度合いの強さの関連性を明らかにし、今後のCMB観測によりUCMHの存在量について制限を与えることができることを示した。この研究の成果は既に査読付き学術雑誌に原著論文として投稿している。 またこのほかにも、小スケール揺らぎが密接に関連していると思われる太陽の10の5乗以上の質量を持つ天体、超大型ブラックホールの進化に関する研究も行なった。ここでは、初期宇宙の超大質量ブラックホール探査として、重力波観測に焦点をあて、超大質量ブラックホールの存在量と重力波シグナルの関連性について明らかにしている。この研究結果についてはすでに2本の学術論文としてまとめ、公表している。 このほかにも、宇宙初期の構造形成に関する1件の学術論文を執筆し、すでに査読付き学術雑誌で公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定位通り、超小型コンパクト天体(UCMH)の重力レンズ効果に焦点を当てて、UCMHの存在量とCMB重力レンズ効果の関連性を明らかにした。UCMHの存在量の探査は、UCMHの起源となる小スケールの原始揺らぎと非常に大きな関連がある。この研究を通じて、今後のCMB観測の発展により、現在のUCMH制限ではまだ未探査の小スケールのUCMHの存在量を探査できることを示した。このことは、小スケールの密度ゆらぎの統計的性質についても大きな知見を得ることができることを示唆している。 また2020年のパルサータイミングアレーNANOGravの結果をうけて、小スケールの原始ゆらぎと密接な関係にあると考えられている超大質量ブラックホールの初期宇宙での存在量の探査について、重力波観測による可能性を探る研究も行った。このことは、本研究課題の新たな方向性を示唆するものであり、研究当初には予想できなかった進展である。
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今後の研究の推進方策 |
研究進捗状況は順調であることから、研究計画に沿って研究を進めていく。 今後は、小スケールの構造による21cmシグナルの精密予測を中心におこなう。また、超大質量ブラックホールも小スケールのゆらぎを探れる可能性がある。21cm線シグナルの測定は超大質量ブラックホール探査の有力な候補の一つである。そのため、当初の計画にはない、超大質量ブラックホールの進化と21cm線シグナルの関係に関する調査も行い、超大質量ブラックホールの進化についても研究を進める。
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