研究課題/領域番号 |
21K03543
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 松江工業高等専門学校 |
研究代表者 |
須原 唯広 松江工業高等専門学校, 数理科学科, 准教授 (10708407)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 核構造 / クラスター構造 / ダイニュートロン相関 / 変形長 / 平均場構造 / 中性子過剰核 / 反対称化分子動力学 |
研究開始時の研究の概要 |
原子核に存在する特徴的な2つの構造、平均場構造とクラスター構造、の両方を精度良く記述できる新しい理論模型を開発する。自然界に存在する安定な原子核に比べて中性子の多い原子核を中性子過剰核と呼ぶが、この中性子過剰核では、安定な原子核では存在できなかった構造が現れることがある。上記の新しい理論模型を用いて、中性子過剰核の新たな構造の発見とその出現機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
今年度は昨年度に引き続いて、17Cの構造研究を行った。17Cは基底状態近傍に、平均場構造とクラスター構造の共存が期待される原子核である。これに対して、平均場構造を記述するのに適した四重極変形度拘束変分法とクラスター構造を記述するのに適したクラスター間距離拘束変分法を同時に適用し、両方の構造を記述し得る枠組みで構造計算を行った。結果として、3/2+, 5/2+, 7/2+, 9/2+状態は平均場的構造を持ち、1/2+は16Cのコアの周りで1中性子が非常に広がったハロー構造を持つことが分かった。また、ハロー構造が現れる証拠としてクーロン力によるトーマスエルマンシフトがミラー核の17Naにおいて見られることも示した。これらの成果を発表するため、現在投稿に向けて論文を執筆中である。 また、平均場構造を表現するうえで本質的な変形長を重イオン散乱から評価する方法について検討を行った。伝統的には、巨視的模型を用いて重イオン散乱を再現するようなポテンシャルの四重極変形長を調べ、それを原子核密度の変形長と見なす、という方法が取られてきた。しかしながら、このポテンシャルと密度の変形長を同じであると見なしてよい、という理論的根拠はない。そこで我々は、変形度が分かっている12Cに対して、密度の変形長を利用する微視的チャネル結合計算を行い重イオン非弾性散乱の断面積を求め、それを再現するようなポテンシャルの変形長を巨視的模型を用いて求め、密度とポテンシャルの変形長を比較した。結果として、伝統的な手法は密度の変形長を系統的に過小評価する可能性があることが分かった。これらの成果は論文にまとめ、現在投稿中である。 また、前年度に投稿中であった10Beのダイニュートロン相関の発達と壊れの程度を散乱実験を通してどのように観測するか、という研究についての論文が出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
17Cが、平均場構造とクラスター構造の共存した原子核であると明らかにしたことは、大きな成果である。また、密度の変形長とポテンシャルの変形長の間に系統的な差があることを明らかにしたことは、原子核の変形について調べるうえで、重要な示唆を与えたと評価できる。 一方、2つの構造の共存を記述する手法の発展という観点では、大きな進展はなかった。これらを合わせると、おおむね順調に進展している、と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、17Cの論文執筆を完了し、出版を目指す。 新しい研究内容としては、16Oにおけるクラスター構造と平均場構造の競合について、検討する。そのために平均場構造の記述の改善が必要であるが、反対称化準クラスター模型の改良を進めたい。
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