研究課題/領域番号 |
21K03544
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
土手 昭伸 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (90450361)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | K中間子原子核 / 少数多体系 / 共鳴状態 / 結合チャネル / 高密度状態 / 量子色力学(QCD) / 少数系 / 精密計算 / チャネル結合 / K中間子原子核 / ハドロン物理 / 結合チャネル系 |
研究開始時の研究の概要 |
K中間子原子核は反K中間子という粒子がくっついた原子核である。反クォークを含み相互作用を媒介する中間子が、露わに構成要素となった新しいタイプの原子核である。近年実験によって、三体系 K-pp (反K中間子K-と2つの陽子pの束縛状態)の存在が確かになってきた。しかしその詳細は不明である。そこで K-pp を含めK原子核少数系の性質を理論的に解明する。 K中間子原子核はいくつかの状態が量子力学的に混ざった、寿命が有限の不安定な状態(共鳴状態)である。共鳴状態を正しく扱う理論手法を用い、実験データと比較を行いつつ、この系がどのような存在形態をとっているのか、普通の原子核とどう違うのか、明らかにする。
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研究実績の概要 |
原子核は陽子と中性子(あわせて核子)からできているが、本課題では反K中間子という粒子を含む原子核(K中間子原子核;K原子核)が研究対象である。核子はアップクォーク、ダウンクォークからできているのに対して、反K中間子はクォークと反クォークからなり、クォークはストレンジクォークというものである。K原子核は、このように核子とは全く違う粒子「反K中間子」を持つ新しいタイプの原子核である。 この反K中間子と核子との間にはとても強い引力が働くため、原子核内部に入った反K中間子の周りに核子が集まり、K原子核は高密度状態になる可能性がある。こういった高密度状態では、相互作用や粒子の質量が変化するといったことが、原子核物理にとって基礎理論である量子色力学(QCD)によって予言されている。また宇宙に存在する中性子星は内部が高密度になった巨大な原子核である。地上実験で生成・測定ができるK原子核の研究によって、QCDや中性子星の理解が進むはずである。 このK原子核の性質を解明するため、反K中間子K-と2つの陽子pからなる、最も基本的な3体系「K-pp」の研究が理論・実験両面で進んでいる。私はK原子核にとって重要な性質(共鳴状態・結合チャネル状態)を正しく扱える計算手法を用い、精密にK原子核を調べてきた。 実験的にK-ppの存在を示唆する結果が得られたことをうけ、その先の4体系・5体系K原子核を扱い、系統的にK原子核を調べようとしている。粒子数が増えると計算の煩雑さが増すが、近年新たに原子核構造研究分野で提案されたHM-AMD法(High-Momentum Anti-symmetrized Molecular Dynamics)を使用することで、計算の煩雑さは回避できると期待される。現在、K原子核用にHM-AMD法を定式化しているところである。(まずはK-p2体系でテスト中)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでに私が使っている計算手法(ガウス基底展開法)では、4体・5体系へと進むと計算コストの増加も然ることながら、定式化の段階で計算がとても煩雑になる。(ヤコビ座標の組み換え、角運動量の合成)こういった困難さを回避するため、原子核構造研究で発展してきた反対称化分子動力学法(Anti-symmetrized Molecular Dynamics; AMD法)をベースとし、精密計算が行えるHM-AMD法(high momentum AMD法)へと計算手法を乗り換えることにした。AMD法自体は私もかつてよく使用していた方法であるが、その改良版であるHM-AMD法にはまだ不慣れであり、またK原子核を精密に取り扱うためには、いくつか考えないといけない問題があることも分かった。そういった理由で予定より遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要の最後に記したように、まずは新しい手法であるHM-AMD法の定式化を完成させる。これまでに述べているように、K原子核研究においては、チャネル結合と共鳴状態の取り扱いは不可避である。そこでこれまでに開発した、これらを適切に取り扱う方法(結合チャネル複素スケーリング法)をHM-AMD法に組み込む。そしてテスト計算として2体系K-pに応用してみて、この系がもつ共鳴状態(ハイペロン共鳴状態Λ(1405)に対応)が再現できるかチェックする。それが確認出来たら、K-ppを始め、より粒子数の大きな系へと進む。
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