研究課題/領域番号 |
21K03546
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
米倉 和也 東北大学, 理学研究科, 准教授 (90769043)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | トポロジー / 量子異常 / 場の量子論 / アノマリー / 超弦理論 / 指数定理 / 対称性 |
研究開始時の研究の概要 |
現代物理学の土台の一つになっているのは場の量子論と呼ばれる枠組みである。これは素粒子物理学の最も重要な基礎となっているだけでなく、原子核、宇宙、物性、数学などの幅広い分野と関わりを持っている。特に「対称性」は極めて重要な役割を果たし、対称性の自発的破れで南部氏がノーベル賞も受賞している。この研究では近年のトポロジーに基づいた研究の原動力になっている、対称性の極めて微妙な破れである量子異常と呼ばれる現象の数理的構造を探究し、その応用も目指す。
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研究実績の概要 |
超弦理論ではブレーンと呼ばれる高次元の物体が存在する。Dブレーンなどはよく調べられているが、まだ知られていなかったり性質がよくわかっていないブレーンなどもありうる。今回の研究ではヘテロティック弦理論で新たなブレーンを発見した。これらは理論の微妙なトポロジーの構造と量子重力理論的な考察から存在が予想できる。一般にブレーンは重力によるブラックホール解のような記述があり、近ホライズン極限をとるとそれがブレーン上の理論と双対であると信じられている。発見したヘテロティック弦理論でのブレーンをホログラフィックに記述する世界面の理論、正確にはブレーンをブラックホール的に実現した時の近ホライズン極限を記述する世界面の理論を厳密に構成した。
別の研究では、QCDの相図をトポロジーや量子異常の考察から研究した。化学ポテンシャルを虚数にした場合の相図はカラー閉じ込めやカイラル対称性の破れなどと関係して理論的興味をもたれているが、それに対して厳密な制限をつけることができた。大雑把にはカラー閉じ込めが起こらなくなる温度よりカイラル対称性が回復する温度のほうが高いか同じかという状況が自然であり、そうでない場合は非自明な3次元共形場理論が実現されなければならないという結果である。
またさらに別の研究ではpure Yang-Mills理論からの宇宙ひもと暗黒物質の生成を研究した。pure Yang-Mills理論のみでこれらを同時に生成することができ,それらは理論が持つ非自明な対称性から説明できる。暗黒物質の質量は他のシナリオに比べてかなり大きくなれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
方向性の異なる幾つかの研究を行うことができた。これらの背景にはトポロジーやそれに関連した対称性、量子異常があり、トポロジー的な考察の有用さを示すことができている。
特にヘテロティック超弦理論におけるブレーンの研究では新たな道を切り開くことができた。様々なブレーンは超弦理論の歴史の中でも極めて重要な役割を果たしてきたが、今回調べたブレーンのいくつかは過去に全く知られておらず、また過去に議論されていたものも性質がほとんどよくわかっていなかった。今回ブレーンの世界面の理論を得ることができたので、大きな発展である。
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今後の研究の推進方策 |
ブレーンの研究については、近ホライズン極限を記述する世界面の理論はわかったものの、まだまだブレーンの詳しい性質はわかっていない。まず近ホライズンのみだけでなくブレーンを記述する重力解全体を求めることを目指す。またブレーンそのものの性質をさらに研究したい。例えばブレーン上に住んでいる理論の性質などを理解するのは重要な課題であるので、今後の詳しい研究で明らかにしていきたい。
別の研究として、場の理論の性質をトポロジーを使って研究していきたい。ある種の場の理論にはテータ角と呼ばれるトポロジーに密接に関係したパラメータがある。このパラメータへの理論の依存性は強結合理論では極めて非自明になる。large Nで、かつテータ角が小さい場合には一般的な結果があるが、テータ角が大きい場合の振る舞いを2次元のモデルの場合に明らかにすることを目指す。
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