研究課題/領域番号 |
21K03553
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 広島大学 (2022) 京都大学 (2021) |
研究代表者 |
滑川 裕介 広島大学, AI・データイノベーション教育研究センター, 特任助教 (00377946)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 原子核(理論) / 原子核(理論) |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、中性子星内部などの高密度領域における物質の性質解明を目的としている。低密度もしくは極端に高密度における性質は既存の研究手法により良く調べられている。一方、中性子星の物理に重要となる中間領域は理解が十分でない。ただし、我々の研究を含む最近の進展により、中間的高密度領域でも一部であれば複素ランジュバン法と呼ばれる手法により非摂動計算が可能であると判明した。この成果を踏まえ「極限状態で物質は、どのように振る舞うのか?」という問いに挑む。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、格子量子色力学計算を用いた高密度領域における物質の性質解明である。ゼロ密度領域ではモンテカルロ法を用いた格子量子色力学シミュレーションにより、非摂動論的解析が可能である。他方、有限密度領域では符号問題が生じ、従来のモンテカルロ法が適用できない。本研究では、符号問題が生じる系でも一部適用可能な複素ランジュバン法による格子量子色力学シミュレーションを進めると共に、より広範囲に適用可能と期待される世界体積ハイブリッドモンテカルロ法および経路最適化法の開発を進める。 本年度は、まず複素ランジュバン法による格子量子色力学シミュレーションの改良を進めた。我々の研究により、通常の複素ランジュバン計算では高密度領域において実現すると期待されているカラー超伝導相の擬オーダーパラメータのゆらぎが大きいと判明した。そこで、新たにダイクォークソース項を加えたシミュレーションを試みた。未だ統計数は少ないものの、ゆらぎが抑制される傾向が確認できた。また、格子摂動論に基づく解析を進め、カラー超伝導相の臨界結合定数を決定した。世界体積ハイブリッドモンテカルロ法に関しては、有限密度4次元スカラー理論へ適用し、期待された自由度の一乗に比例する計算時間および既存の計算手法との物理量期待値の一致を確認できた。経路最適化法の改良も進め、ゲージ共変ニューラルネットワークの有効性を確認した。さらに、機械学習におけるヤコビアン近似により、学習効率を保ちつつ大幅な計算時間の削減に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
通常の複素ランジュバン計算ではカラー超伝導相の擬オーダーパラメータのゆらぎが大きく有意なシグナルが得られにくいという困難に遭遇したが、ダイクォークソース項により、ゆらぎが抑制されうると確認できた。また、格子摂動論に基づく解析によりカラー超伝導相の臨界結合定数の予言値が得られ、シミュレーションの指針が出来た。世界体積ハイブリッドモンテカルロ法や経路最適化法の研究も進展し、場の理論においての有効性確認・手法の改良による大幅な計算コスト削減に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に新たに開発したダイクォークソース項を付与した複素ランジュバンシミュレーションを進め、非摂動論的にカラー超伝導相の相構造決定を試みる。その際、格子摂動論による結果と比較し、どの程度の差異が生じるか定量的に調べる。また、世界体積ハイブリッドモンテカルロ法や経路最適化法などの新手法も複雑な系に適用可能になりつつある。最終目標である有限密度量子色力学への適用を念頭に、より複雑な系における新手法の有効性を検証する。
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