研究課題/領域番号 |
21K03554
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
大木 洋 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (50596939)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 格子理論 / 素粒子現象論 / 宇宙起源 / モンテカルロシミュレーション / 素粒子論 / 場の量子論 / CP対称性 / 宇宙論 / テンソルネットワーク繰り込み群 / 格子ゲージ理論 / テンソルネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では格子正則化を用いた場の量子論の非摂動計算を行う事で、量子色力学の第一原理計算に基づくハドロンのCP対称性の破れの精密計算や、真空の崩壊率等の非摂動計算法の研究を行う。 特に真空崩壊率の計算では、テンソルネットワーク法を用いた実時間の場の遷移振幅の格子定式化に関する研究を行うことで、相転移現象に関する非摂動的効果に関する知見が得られる事が期待される。 また真空崩壊率と宇宙の相転移現象(初期重力波生成やCP対称性の破れ)が密接に関連するため、これらの計算を将来の素粒子実験や重力波観測結果等を比較することで素粒子新物理模型、物質優勢宇宙誕生のシナリオの定量的な検証を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の主要課題の一つである格子理論のテンソルネットワーク表示を用いた非摂動計算に関して、 本年度はテンソルネットワーク繰り込み群における特異値分解における確率論的手法を取り入れたテンソルネットワーク繰り込み群(TRG)の手法についての再考察を行い、これまでの研究成果をまとめた論文を執筆し発表した。この確率論的手法を取り入れた手法では、系統誤差を統計揺らぎに置き換えることが出来るため, 通常のTRGに比べ系統誤差が少なく高精度で計算出来る。しかし、ノイズベクトルの多重使用に伴う付加的な系統誤差が存在することがこの手法の欠点であるが、その誤差はノイズベクトルの性質によって系統的に制御可能であるため、スケーリング則がわかっていないような複雑な模型にも応用出来る可能性がある。本研究成果は査読付き学術論文All-mode renormalization for tensor network with stochastic noise, Phys.Rev.D 107 (2023) 11として出版された。 また、本研究のもう一つの主要な課題であるCP非保存の起源の解明に関する素粒子論的研究に関して、通常のCP変換とは異なる粒子と別の粒子間の変換であるCP-like変換といわれる新しい対称性を持った理論における物質反物質非対称性の可能性や連続群に対するCP-like対称性のある模型の考察などを行い、従来考えられていたより広いタイプの内部対称性を持つ理論にCP-like対称性が存在できることを明らかにした。これらのCP-like対称性の一般的性質についての研究を論文としてまとめ、現在学術論文として投稿している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宇宙の相転移現象の解明には非摂動ダイナミクスを含めた計算が重要であり、非摂動ダイナミクスを比較的効率的に計算できる手法の一つであるテンソルネットワーク法は近年様々な方面から精力的に調べられている。本研究では格子計算で用いられてきた確率過程法を組み合わせることで、従来とは全く異なるアプローチによるテンソル繰り込み群の計算手法を提唱することに成功した。これまでのテンソルネットワーク繰り込み群に関する研究の蓄積と新たな知見を活かして、今後は物質反物質非対称性の起源に起因する真空の相転移現象に関する非摂動計算への研究に進展させていく予定である。 また物質反物質非対称性と密接に関連するCP(-like)対称性の自発的破れと真空構造の関係についての研究にも同時に進めることが出来ているため、宇宙の起源の謎の解明に関する現在進めている幾つかの研究課題について興味深い成果が得られる可能性が高まっている。
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今後の研究の推進方策 |
CP対称性の破れの起源と物質優勢宇宙の起源の解明に関する素粒子論的研究を進め、大統一理論からの導出や高エネルギー加速器実験結果との整合性等の現象論的観点からの模型構築を研究し、素粒子標準模型におけるこれら現象論的諸問題の解決に向けたシナリオの提唱を行うことで、宇宙の進化の謎に関連する新たな可能性を模索する。同時にもう一つの重要な宇宙の謎の一つである暗黒物質の正体に関して、CP対称性の破れとの関連については、物質優勢宇宙と暗黒物質の起源の両方を同時に考察することで、従来の素粒子宇宙論的なモデルでは考えられていなかった新たな宇宙進化のシナリオが得られる可能性があると考えている。これまでのCP(-like)対称性に関する研究で培った知見を活かし、素粒子標準模型における物質優勢宇宙、暗黒物質、初期宇宙の真空相転移のシナリオの解明とその定量的な評価を行う研究を進める。
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