研究課題/領域番号 |
21K03562
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
長尾 桂子 岡山理科大学, 理学部, 講師 (90707986)
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研究分担者 |
中 竜大 東邦大学, 理学部, 准教授 (00608888)
東野 聡 神戸大学, 理学研究科, 学術研究員 (00895469)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 暗黒物質 / 直接検出実験 / 素粒子現象論 / ニュートリノ / 暗黒物質の密度プロファイル / 宇宙線 / Wボソン / 標準模型を超える物理 / 銀河中心方向 |
研究開始時の研究の概要 |
暗黒物質の直接検出実験の結果から、従来の想定より軽い暗黒物質が有望視されはじめた。軽い暗黒物質は検出が難しいと考えられてきたが、宇宙線に加速される現象を通じて、検出実験での制限や検出が可能になることが近年提案された。本研究では、宇宙線によって加速され地球に飛来する軽い暗黒物質を検出するために検出器に求められる性能、また検出可能な質量や相互作用の範囲を明らかにする。軽い暗黒物質の到来は、銀河系での暗黒物質や宇宙線の分布、地球内部での減衰とといった環境による影響をうけるため、これらをの影響を検討し考慮した上で、シミュレーションを通して検出能力を調べる。
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研究実績の概要 |
軽い暗黒物質が銀河系の中心部で宇宙線によって散乱されて加速し、高速で地球に到来する場合に、軽い暗黒物質を地下実験で検証する方法について昨年度に引き続き研究を行った。特に、暗黒物質の質量が100MeVから1GeV程度の場合に、銀河中心方向から飛来する方向的な特徴が、方向情報を検出できる暗黒物質の検出実験で検証できることを示し、論文として出版した。暗黒物質が軽い場合には、比較的大きな相互作用が許されるため、地下実験施設に地中を通って到達するまでに減衰する可能性があり、この効果を考慮しながら将来的な検証について検討した。また、暗黒物質が宇宙線によって強く加速される場合は、検出時の散乱過程が単純な弾性散乱で近似できなくなるため、弾性散乱でない場合について適切な手法で考慮する必要があることも明らかになった。弾性散乱でない場合のどのような手法で計算するのが適切かは、今後の研究の課題である。 また、軽い暗黒物質を含む新しい素粒子模型についても検討を行った。U(1)Lμ-Lτ×U(1)H対称性をもつ素粒子模型において、軽い暗黒物質が対消滅してニュートリノ信号を放出する場合、これまでの素粒子実験の制限と矛盾しないパラメータ領域が存在すること、また、ニュートリノ検出実験で将来的にこの模型を検証できることを示した。本研究は、論文として出版した。また、不活性な暗黒物質を含むアイソスピン三重項模型において、模型に含まれるニュートリノと暗黒物質に関してこれまでの素粒子実験での制限と矛盾しない領域が存在することを示した。現在、論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の目的は、宇宙線によって加速された軽い暗黒物質の地下実験での将来的な検出を評価することである。本年度は、地中での減衰効果や暗黒物質の銀河系での分布モデルの依存性などを考慮して検出の可能性を評価して成果をまとめ、査読付き学術誌論文として2本出版することができた。そのため、本研究課題の目的を達成することができたと言える。これらの成果は、国際会議で4件(うち1件が招待講演)の発表、学会でも2件の発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
宇宙線によって加速される軽い暗黒物質と同様に、暗黒物質が加速される場合として、多成分暗黒物質模型で暗黒物質の対消滅や崩壊によって加速された暗黒物質が生成されるケースが考えられる。この場合も、暗黒物質密度が高い銀河系の中心部から加速された暗黒物質が到来すると期待できる。そのため今後は、暗黒物質検出実験等でこのような暗黒物質模型を制限、または将来の検出ができるかを検討する。
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