研究課題/領域番号 |
21K03564
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
阿部 喬 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 協力研究員 (70463958)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 核構造 / 核子対相関 / 殻模型 / 第一原理計算 / 核子間相関 / 核子相関 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ヘリウム6(8)における余剰中性子2(4)個の間で働く核子相関を取り扱う。ヘリウム6の基底状態では、通常核でみられるような空間的に広がったBCS的な対相関ではなく、2個の余剰中性子が空間的にコンパクトな形状を持つBEC的な対相関がαクラスターを仮定する3体模型から示唆されているが、これについて殻模型による第一原理計算により検証する。また、ヘリウム8の基底状態でも、5体模型から4つの余剰中性子がBEC的相関を持つ2つのペアを形成するような描像が得られているが、これについても同様な検証を行う。さらに、励起状態においてこのような構造がどのように変化しうるのかについても理解を深める。
|
研究実績の概要 |
本研究課題初年度に当たる前年度に行った閉殻芯を仮定しないモンテカルロ殻模型による第一原理計算における軽い4n核の基底状態の物理量を対象とした原理実証研究、及び、恒星内での元素合成に重要な炭素12のホイル状態に着目したαクラスター構造における第一原理計算による研究の成果を踏まえ、本年度では、本研究課題の主題であるダイニュートロン相関の第一原理計算による理解を目指して、前年度に行ったヘリウム同位体における計算をさらに推し進めた。 前年度では、模型空間として7主殻、基底数として100基底までの計算を行ったが、ヘリウム4,6に関してはそれらの構造を議論するのに十分な精度である一方、ヘリウム8,10などより中性子過剰なヘリウム同位体については定量的な観点からそれらの構造を議論するには、さらなる計算が必要であることがわかった。そのため、本年度では、同じ模型空間の大きさで基底数をさらに200まで増やした計算を行った。これにより、その模型空間において収束したエネルギーを得るために基底数に関して外挿することが可能となり、エネルギーを精度よく決定することが可能となった。また、7主殻の他に2から6主殻の模型空間の大きさについても同様の計算を行い、これらの計算結果から模型空間に関してもエネルギーを外挿することにより、信頼性の高い第一原理解を得ることができるようになった。このようにして得られた高精度の多体波動関数を用いて物体固定座標系での密度分布を描くことができるようになったため、ヘリウム同位体における余剰中性子の密度分布の解析からダイニュートロン相関の発現機構を第一原理計算の観点から議論することが可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘリウム同位体の基底状態、及び、第一励起状態における種々の物理量について実験データと定量的な観点から比較できる信頼性の高い多体波動関数が殻模型による第一原理計算により得られるようになった。この波動関数を用いて物体固定座標系での密度分布を描くことができるので、ヘリウム同位体の余剰中性子の密度分布の解析からダイニュートロン相関を第一原理計算の観点から議論することが可能となり、その発現機構の理解へと繋がると期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究で得られた信頼性の高い多体波動関数を用いることにより炭素12のαクラスター構造を議論したときと同様にヘリウム同位体でも物体固定座標系における密度分布を描くことにより、これらの同位体で余剰中性子がどのような核子相関を持つのか可視化する。得られた余剰中性子の密度分布からヘリウム同位体の基底状態や励起状態において、通常核でみられるような空間的に広がったBCS的な対相関を持つのか、もしくは、空間的にコンパクトな形状を持つようなBEC的な対相関を持つのか、これらについて殻模型による第一原理計算により検証する。さらに、波動関数を構成する基底関数が持つ変形度を可視化する手法を用いることにより第一原理計算の観点からダイニュートロン相関の発現機構の理解へと繋げる。
|