研究課題/領域番号 |
21K03568
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 宏次 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (10313173)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 符号問題 / 有限温度密度の量子色力学 / 状態相図 / 実時間量子発展 / 非平衡統計力学 / 重イオン衝突の物理 / 統計力学 / 有限温度密度QCD / 実時間発展シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
場の量子論の観測量はボルツマン因子を用いて統計力学的な平均の形に書き表されるが、有限密度条件のQCDや観測量の実時間発展のような物理量は、ボルツマン因子に相当する量が複素数になるために、モンテカルロ法による統計平均の数値的評価が極めて困難になる(符号問題)。ところが、観測量の解析性に基づいて力学変数を複素数に拡張して分配関数を評価する方法が符号問題の解決法の可能性として近年注目されている。本研究ではこの手法を検討・拡張し、符号問題解決の可能性を探る。将来的には中性子星内部の高密度状態やクォークグルーオンプラズマの時間発展を第一原理的に研究する手段につながることを目標としている。
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研究実績の概要 |
Thimble法に基づいたシミュレーション: 符号問題を伴う分配関数の評価に一般化Lefschetz thimble法を用いるための数値計算コードを,1+1次元massive Thirring 模型とカイラルランダム行列模型に対して開発した.これは先行研究によって示されていたthimble法の有効性と問題点を追試する段階である.今後は,開発したコードを用いて,カイラル対称性の振る舞いと複素配位空間でのサンプリングとの関連を調べていく予定である.本研究の主題である非可換ゲージ理論QCDシミュレーション(および実時間発展)の計算アルゴリズムについては,thimble法適用コードの開発を継続しているところであるが,今年度は進捗が特に停滞したと言わざるを得ない. ハミルトニアン形式に基づいた解析の準備: 他方,符号問題が出現しないアプローチとして,波動関数を行列積状態(MPS)を用いて表し,MPSに次元制限を導入する形で,低エネルギー状態をよく近似する手法がある.符号問題のアルゴリズム的解決を目指す本研究を対比的な手法として,これを1+1次元場の理論に適用する研究を共同で開始して進めている. 原子核衝突実験でのゆらぎの成長と観測の可能性: 高エネルギー原子核衝突実験では,有限温度密度QCDに存在が期待される臨界点の実験探索が1つの重要課題となっている.しかし,時間発展に伴うゆらぎの成長と緩和に対する非平衡効果の影響はよく理解されていない.衝突事象は正に実時間発展するQCD系の問題であり,将来的には実時間発展シミュレーションを行うことが期待される.本研究では,量子系の2点相関関数の時間発展方程式を現象論的に立てて解析することによって,非平衡効果がゆらぎスペクトルを通して観測量に与える影響を評価できることを指摘した.現在は,その具体的な数値評価に取り組んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コード開発・数値解析を行うためには集中できる研究時間を確保する必要があるが,これが難しかった.特に,当該年度の後半は,他機関への異動が決まったことに伴って,その前後の関連業務が増えたことが影響した.
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を1年間延長したところであり,本研究に配分する研究時間を十分に確保して,模型に対して開発済みのthimble法の計算コードを活用して,カイラル対称性の振る舞いが複素配位空間での現れ方を解明する課題を遂行する.その次に,QCDに対するthimble法の計算コードの開発に注力する.研究・教育活動上の優先順位を明確につけて,研究の遂行を目指す. ハミルトン形式でのMPSに基づいたアプローチについての共同研究については,本主題の進捗を見極めつつ,並行して進める.
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