研究課題/領域番号 |
21K03569
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
今村 洋介 東京工業大学, 理学院, 准教授 (80323492)
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研究分担者 |
横山 大輔 明治大学, 理工学部, 専任講師 (50849312)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 超対称性 / 超共形指数 / ブレーン / 弦理論 / AdS/CFT対応 / AdS/CFT |
研究開始時の研究の概要 |
素粒子にどのような種類、性質のものがあり得るのかということを調べることは、重要な問題である。素粒子の性質はさまざまな物理量を計算することで表されるが、多くの場合、物理的に興味深い系では計算が困難である。近年、そのような場合であっても、双対性という、複数の系の等価関係を用いてさまざまな系を解析することが可能になってきた。本研究はAdS/CFTと呼ばれる双対性に注目し、その適用範囲の拡張を目指す。
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研究実績の概要 |
令和5年度の中心的な成果は、4次元の複数の超対称ゲージ理論に対して、その超共形指数が simple-sum giant graviton expansion によって与えられることを、具体的な計算によって示したものである。本研究課題の主要な目標は、有限のNにおけるゲージ理論の物理量を、AdS/CFT対応を通してAdS側の計算によって与えることである。特に超共形指数の計算においてはgiant graviton (GG)と呼ばれるブレーンが有限のN補正を与えることがこれまでの研究によって明らかになった。GG の枚数についての展開式として超共形指数を与える式は giant graviton expansion (GGE)と呼ばれている。しかしながら、複数枚のGGの計算を行うことは、我々がこれまでに用いてきたGGEでは技術的に難しく、主に一枚のGGの効果のみを取り入れた解析が中心であった。この困難を克服するため、Gaiotto と Lee によって N=4 U(N) 超対称ヤン・ミルズ理論に対して提案された simple-sum GGE をより広いクラスのゲージ理論に対して拡張し、それらの理論においても有限のNにおける超共形指数を正しくAdS側で計算できることを確認し、今村、横山を中心とした5人の共著論文として"Simple-sum giant graviton expansions for orbifolds and orientifolds"というタイトルの論文として発表した。 また、今村は、ブラックホールのホーキング輻射に対する、プランクスケールの物理の影響に関する考察を行った論文"A stringy effect in Hawking radiation"を他の研究者3人との共著論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、もともと以下の課題を設定していた。 (1)有限のランクNのゲージ理論に対する、AdS側での超共形指数の計算方法の確立 (2)(1)の手法を超共形指数が未知の理論に適用し、新しい結果を得る。 (3)球面分配関数との関係の解明 (4)ブラックホールエントロピーの理解に向けた解析 これらのうち、(1)に関しては、数値的な解析が中心ではあるものの、すでに多くの成果をあげ、論文として発表済みである。また、(2)についても、6次元ゲージ理論や4次元の非ラグランジアン理論などに対していくつかの成果を上げることができた。また、(4)については、我々自身は今のところ具体的な成果を挙げていないが、我々のこれまでの研究成果を利用することでブラックホールエントロピーを再現する研究などが他の研究者によって発表されており、間接的に我々の研究が寄与しているということができる。(3)については、いまだに手がかりが得られていないが、全体としてみると、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は以下の3つの問題に取り組みたい。 1.これまで行ってきた、超共形指数のAdS側での計算方法の確立については引き続き研究を進める。これまでは、数値的な解析を多用することで多くの例に対して我々の開発した計算手法(giant graviton expansion)が有効であることを示してきたが、今後は数学的により厳密で説得力のある証明、例えば超対称性を用いた局所化による公式の導出など、を目指したい。 2.超共形指数の一般化として、欠陥が導入された場の理論に対する指数についても、giant graviton expansion が有効であることを最近発見した。報告書作成時点ですでにウィルソンラインを挿入した場合に関して二つの論文(査読中)を発表しているが、より多様な欠陥(ドメインウォールや面演算子など)を考えることでさらなる広がりが期待できる研究テーマであるため、引き続き研究していく。 3.有限のNに対する球面分配関数と giant graviton expansion の関係の解明は、本研究課題の初期の段階から計画をしていたものの、今のところ成果を得られていない問題である。球面分配関数(特に3次元のもの)は位相的弦理論の分配関数などと密接に関係しているため、もし何らかの進展があれば大きな進展が期待できる。 残念ながら、これら全ての問題に取り組むには、十分な時間は残されていないため、1と2の問題について今村、横山で協力しつつ進め、3について何らかの手がかりがもし得られた場合には3を最優先で進めることとしたい。
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