研究課題/領域番号 |
21K03572
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
久野 純治 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 教授 (60300670)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | CP対称性の破れ / 強いCPの破れ / 電気双極子能率 / フレーバーの物理 / 標準模型を超える物理 |
研究開始時の研究の概要 |
物質場の持つ世代という構造に着目し、より高いエネルギースケールやより弱い相互作用に感度を持つ電子や中性子の電気双極子能率(EDM)、μ→eγと言った荷電レプトンフレーバー数秘保存(LFV)過程といったフレーバーの物理を通して、標準模型を超える物理 の糸口を探るための理論を整備することを目的とする。特に、ニュートリノ質量の起源、強いCPの破れの問題、3世代構造という標準模型の持つパズルに対して、「もう一つの可能性」としての輻射シーソー模型、左右対称模型、ベクター的フェルミオン導入による世代の拡張などに焦点を当て、その検証の可能性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
QCDにおけるθ項は時間反転、空間反転に対して奇であり、CP対称性を破る演算子ある。実験から導かれた中性子の電気双極子能率の上限値からθ項の係数、θパラメータが10^-10より小さいことがわかっており、なぜ小さいかは謎であり、この問題は強いCP問題と言われている。クォークの質量の位相はθパラメータに寄与を与えることが知られている。これはカイラルアノマリーや藤川の方法によって導かれている。強いCP問題を解決する理論には、θ項を禁止する左右対称性やCP対称性の導入があるが、それらの対称性は自発的に破れている必要があるため、量子補正によってゼロではいθパラメータが導かれることが期待される。 これまでθパラメータへの量子補正は、カイラルアノマリーや藤川の方法をもとに、クォーク質量の位相への量子補正を計算することで行われてきた。我々はクォークを積分することで直接θパラメータを評価する方法を、Fock-Shwingerゲージを用いて開発した。これまで、クォーク質量の位相への量子補正を経由しないθパラメータへの寄与が無視されていたが、それが計算できるようになった。 我々が導いた方法を用いて、最小左右対称模型において、2ループレベルのダイアグラムがθ項を導かないことを示した。さらに、理論の構造から3ループレベルのダイアグラムで有限の値が導かれ、その値の概算を導いた。中性子の電気双極子能率の上限値から導かれたθパラメータの値の上限から理論のパラメータに対して制限を行い、また将来実験でこの模型の広いパラメータ領域が検証可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
強いCPの破れの問題を解決する左右対称模型におけるθパラメータの予言の評価をすることは予定にあったことであったが、QCD θ項への量子補正をクォークを直接積分することで評価することが可能であることがわかったので、一気に見通しがたった。
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今後の研究の推進方策 |
1)強いCPの破れの問題を解決するCP対称性を自発的に破る模型でのQCD θ項の予言を評価する。クォークを直接積分することでθパラメータを評価できるが、有効理論の方法を応用して、精度良い評価方法を確立する。 2)クォークを直接積分することでθパラメータを評価できることがわかった。クォーク質量の位相を藤川の方法でθパラメータに押しつけた時とそうでない時で物理的な結果が同じであることから、様々な非自明な恒等式が導かれる。それらの理解を深める。 3)ベクター的クォークが存在する場合の電気双極子能率の評価を行う。また、その結果を左右対称模型のθパラメータの予言に応用する。
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