研究課題/領域番号 |
21K03580
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
姫本 宣朗 日本大学, 生産工学部, 教授 (40552352)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 重力波 / データ解析 / 背景重力波 / シューマン共鳴 / 一般相対論 / 初期宇宙 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、世界各地で重力波観測の計画が活発に推し進められている。今後の観測対象は、連星合体からの重力波だけにとどまらず、初期宇宙に起源をもつ宇宙全体に一様に存在する重力波(宇宙論的背景重力波)にまで広がっている。本研究では、宇宙論的背景重力波検出をする過程で障害となる,地球規模で存在する大域磁場を原因とした重力波検出器間の相関ノイズや多数の連星合体からの重力波の重ね合わせによって生じる天体起源的背景重力波を取り除くための実践的なデータ解析の開発を行なっていく。
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研究実績の概要 |
現在稼働中のLIGO・Virgo・KAGRAや建造予定のEinstein Telescopeに代表される第3世代の重力波検出器の完成によって、多数のコンパクト連星合体からの重力波による天体起源的背景重力波や、初期宇宙に起源を持つ宇宙論的背景重力波の検出が、現実味を帯びてきている。このような背景重力波の検出には、複数台の検出器から得られるデータ間で相関を取る相関解析が本質的である。なぜなら、ランダムな位相と非常に小さな振幅をもった重力波が重ね合わさった結果として存在している背景重力波は、特徴的な波形をもたないため、一台の検出器では雑音との区別が原理的に不可能だからである。しかしながら、地球規模で存在する擾乱が重力波検出器に影響を与える場合、十分離れた2台の検出器でも、重力波以外の相関が現れ、相関雑音による重力波誤検出を誘発する恐れがある。このような相関雑音の主要な原因の一つが、シューマン共鳴磁場と呼ばれる大域磁場であり、事実、深刻な影響を及ぼす可能性があることがこれまでに報告されている。 本年度では、シューマン共鳴磁場による相関雑音が背景重力波の検出に与える影響について、フィッシャー解析に基づいて定量的に明らかにした。具体的には、パラメトライズされた相関雑音のもとで、背景重力波のパラメーターを相関雑音のモデルパラメーターと同時に推定しても、パラメーター間の強い縮退は起こらず、従来通りに、背景重力波の振幅・ベキ指数を制限・推定できること、またその一方で、相関雑音を無視して背景重力波だけでパラメーター推定を行った場合には、背景重力波の振幅やベキ指数のベストフィット値がバイアスされることなどについて明らかにした。この成果は論文として, Physical Review Dに掲載採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、二つの大きな達成目標を持っている。一つ目の目標は、地球を取り巻く磁場(シューマン共鳴磁場)による重力波検出器間の相関解析によって生じる相関雑音の影響を低減することである。二つ目の目標は、相関雑音の低減によって検出可能になる天体起源の背景重力波を、宇宙論的背景重力波の前景として取り扱い、それを取り除くことを目的としたデータ解析を構築することである。一つ目の研究に関しては、今年度の研究において、モデル化された背景重力波と相関雑音を特徴づけるパラメータを同時に推定した場合のパラメータの決定精度を、フィッシャー解析を用いて評価し、これらのパラメータが互いに識別可能であることを示した。また、二つ目の研究に関しては、前年度の研究において、多数の連星系によって重なり合って生じた天体起源の背景重力波の個々の連星系を特定できることを明らかにし、天体起源の背景重力波の取り除きが原理的に可能であることを示すことができた。現在のところ、研究方針通りに成果が出ており、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
背景重力波の検出には、複数の検出器から得られるデータの間で相関を解析することが必要不可欠である。なぜなら、ランダムな位相と極めて小さな振幅を持つ重力波が重ね合わさった結果として存在する背景重力波は、特徴的な波形を持たず、一つの検出器では雑音との区別が理論的に不可能であるからである。しかしながら、地球全体に存在する擾乱が重力波検出器に影響を与える場合、十分に離れた2つの検出器でも、重力波以外の相関が現れ、相関雑音による重力波の誤検出を引き起こす恐れがある。このような相関雑音の主要な原因の一つが、シューマン共鳴磁場と呼ばれる大域磁場であり、実際に深刻な影響を及ぼす可能性が報告されている。 R5年度では、シューマン共鳴磁場による相関雑音が背景重力波の検出に与える影響について、実際のデータを用いたより実践的なデータ解析の手法を開発していく。実際に観測されるシューマン共鳴は、日変動や季節変動など非定常な性質を持つため、これらの影響を考慮したデータ解析手法を考案していくことが重要である。これらの研究を進めていく上で、理論的側面においては共同研究者である樽家氏(京都大学基礎物理学研究所)と西澤氏(東大ビッグバンセンター)と共同研究を行い、また実際のデータ提供に関しては重力波検出器KAGRAのメンバーである鷲見氏の協力を得て、研究を遂行していく。
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