現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地上重力波望遠鏡の第4次観測(O4)が遅延しており、本年度は、これまでに得られたデータを用いた研究、これから行われるであろう重力波観測のための準備としての理論的研究の双方を進める時期であった。 前者の研究成果は、中性子星とブラックホールの連星系の起源を論じたものであり(Tomoya Kinugawa, Takashi Nakamura, Hiroyuki Nakano, Mon. Not. Roy. Astron. Soc. 515, L78 (2022))として出版した。今後の重力波観測により、さらに詳細な議論が可能になるであろう。 後者の研究成果は2つあるが、どちらもインスパイラル重力波に着目した研究である。1つは、超大質量ブラックホールと太陽質量程度のコンパクト天体からなる連星系についてであり、(Soichiro Isoyama, Ryuichi Fujita, Alvin J.K. Chua, Hiroyuki Nakano et al., Phys. Rev. Lett. 128, 231101 (2022))として出版した研究成果は、将来の宇宙重力波望遠鏡から得られる重力波データ解析に活用される。もう1つは、楕円軌道運動の連星系に対する数値相対論の初期データを準備するために、(Alessandro Ciarfella, James Healy, Carlos O. Lousto, Hiroyuki Nakano, Phys. Rev. D 106, 104035 (2022))においてポストニュートン近似法を用いて離心率を定義した。これまでにも様々な離心率の定義が行われているが、我々の提案した方法により、シンプルに離心率を取り扱うことができ、数値相対論の初期データを効率良く準備することができ、今後の連星系シミュレーションに利用される。
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