研究課題
基盤研究(C)
T2K実験では、大強度のニュートリノビームを利用してニュートリノ振動を測定し、宇宙にはなぜ反物質はなく物質しかないのかという疑問に答えようとしている。ニュートリノ振動とは、ニュートリノの飛行中にその種類が別の種類に変わる現象のことで、T2K実験では、ミュー型が電子型に変化する現象と、反ミュー型が反電子型に変化する現象の両者を測定し、その非対称性からCP対称性の破れを測定する。このCP対称性の破れが物質・反物質非対称の原因である。この測定を早期に実現するためには、大強度のミューオンを測定する高放射線耐性の検出器が必要であるため、電子増倍管という新しい検出器に着目し、その放射線耐性を測定する。
長基線ニュートリノ振動実験T2KはニュートリノのCP対称性の破れの兆候を世界で初めて見出し、現在はデータの蓄積と装置の高度化を行いつつCP対称性の破れの発見に向けて研究を進めている。クォークのCP対称性の破れだけでは現在の物質優勢宇宙を全く説明できないため、ニュートリノのCP対称性の破れの発見に期待がかかっている。その中で、大強度陽子加速器施設(J-PARC)からスーパーカミオカンデに向けてニュートリノビームを打ち出すときに、その方向をリアルタイムに監視している装置、ミューオンモニター(MUMON)がある。MUMONには49個のシリコン検出器(Si)が縦横に並べられ、パイ中間子の崩壊時にニュートリノと同時に生成されるミューオンを測定することで間接的にニュートリノの方向を監視している。しかし加速器の増強と共にミューオン強度も増加し、Siは放射線損傷により信号が低下し使用に耐えなくなってきた。そこで次期検出器として電子増倍管(EMT)が候補に挙げられ開発が進められている。EMTは小型の光電子増倍管のフォトカソードをアルミで蒸着したもので、ミューオンがダイノードに衝突して生成される電子を増幅してその強度を測定する検出器である。2021年度と2022年度に東北大学ELPHでのテスト実験により、EMTが十分な放射線耐性を持ち、J-PARCメインリング(MR)の将来強度(1.3MW)において100日間の照射に対しても数%の信号減少しか認められず、広い強度範囲においても良好な信号応答の線形性が確認された。2023年度はJ-PARCのMUMONピットにEMTを持ち込み、MUMONの中央部分に7個を水平方向に並べ、MRのビーム強度710kWでデータを収集した。Siと遜色ないプロファイルを得ることに成功しSiの後継機としての可能性を十分に示した。今後はEMTの数を増やして実用化へ進めていく。
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