研究課題/領域番号 |
21K03594
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
市川 豪 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究員 (60749985)
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研究分担者 |
三島 賢二 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別准教授 (20392136)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 中性子 / 未知相互作用 / 素粒子実験 / 重力 / 中性子散乱 |
研究開始時の研究の概要 |
余剰次元モデルによると、ごく短距離での重力は時空の構造によって逆二乗則からずれ、未知の相互作用が加わったように見える可能性がある。中性子は質量があるが電荷を持たず長い寿命を持つため、このような重力相互作用の検証に非常に適している。 低速中性子ビームを凹面鏡に沿うように入射すると遠心力によってwhispering galleryと呼ばれる鏡面を這うような量子状態を作る。この状態の波動関数を精密に測定し理論計算と比較することで、中性子と鏡面との間に働く未知の相互作用の探索が可能である。J-PARCパルス中性子源と超精密研磨された凹面鏡を用いて世界最高の感度で未知相互作用の探索を行う。
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研究実績の概要 |
中性子whispering gallery状態を用いて、10-100 nm程度の距離で観測される未知相互作用を探索するのが目的である。その前段階として、既知の相互作用によって物理測定結果を十分再現することが必要である。 中性子whispering gallery状態の観測で波長・散乱角の2次元平面上で、準位間の干渉に由来する干渉縞が得られており、定性的な分布は計算結果とよく合っている。波長方向に射影すると、生存する準位数が段階的に増えるため、中性子生存数が階段状に増えていく。第1段目の波長は床の材質であるSiO2ポテンシャルとよく一致しているが、波長>0.4 nm部分では、実験値が計算値より少なくなり乖離が生じている。また、散乱角では波長>0.4 nmぶ分で散乱角の大きい領域で実験値が計算値より少なくなっている。計算値は理想的な入射・鏡面を仮定したモデルであるため、実験系における擾乱や表面粗さに起因する効果が取り入れられていないためであると考えられる。 いくつかのモデルを立てて実験値を再現するか試みたが、再現するには至っていない。まず、ソフトポテンシャルと呼ばれる、鏡面ポテンシャルが緩やかに変化するモデルを考えた。これは、ガラス鏡面の酸化を説明するものとして知られている。ソフトポテンシャルを入れると、その効果により第1段目の階段の波長が一致しなくなる。ガラス面の虚部ポテンシャルによる吸収、床粗さ領域内に存在する確率に比例した吸収では説明出来なかった。また、実効的に波長の階段状分布が一致するように準位の生存率を調整しても、散乱角分布は一致することは無かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中性子whispering gallery状態の、ガラス床およびプラチナ蒸着表面における実験データは取得されており、理想的条件に対する取り扱いは出来ていると思われるが、結果を説明するために必要なモデルへの修正が十分に確立されていない。
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今後の研究の推進方策 |
理想的状態と異なる部分をモデル計算に取り入れるため、あらゆる可能性を考慮する。大角度領域で中性子数が減少することから、凹面鏡の入射・出射部分での形状や、表面粗さが関与している可能性がある。また、現在は波長・発散角の2次元分布の干渉縞をプロットしているが、whispering gallery状態をより物理的に本質的な変数でプロットすると問題点が浮かぶ可能性があるため、検討を進める。
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