研究課題/領域番号 |
21K03605
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
|
研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
池田 大輔 神奈川大学, 工学部, 助教 (60584258)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 極高エネルギー宇宙線 / 大気蛍光望遠鏡 / フレネルレンズ / 事象再構成 / 装置開発 / CRAFFT実験 / 測定精度 |
研究開始時の研究の概要 |
極高エネルギー宇宙線の起源や加速機構の解明を目指した将来の大規模計画を実現するため、安価で、宇宙線の組成に感度のある測定手法が必要とされている。本研究では簡素化された次世代大気蛍光望遠鏡に着目し、本手法で不鮮明である装置単独での宇宙線事象測定精度を得るため、再構成手法の開発、及び手法に最適な焦点面カメラを持つ望遠鏡を構築する。本手法及び開発した望遠鏡は米国ユタ州で現在稼働中のTelescope Array実験との宇宙線同時観測により検証する。本研究により、次世代大気蛍光望遠鏡の性能を明らかにし、大規模観測実験を実現する観測手法として確立する。
|
研究実績の概要 |
極高エネルギー宇宙線観測の将来計画として、化学組成への感度を持ち、既存の実験に対して1桁以上の有効観測面積を向上させた大規模実験が期待されている。これまでの実験で実績のある、宇宙線空気シャワーからの大気蛍光を撮像する大気蛍光望遠鏡は、全ての宇宙線事象に対して化学組成に感度のある測定を行なうことが可能であること、他の手法に対して検出器の設置密度を疎にすることが可能であることから、将来の実験を担う観測手法として期待されている。本研究では、光学系を最適化し、スタンドアローンで稼働する安価な次世代大気蛍光望遠鏡をデザインすること、空気シャワーに対する再構成手法の開発の2つを行ない、手法を確立することである。 本年度は前年度に検出器シミュレーションを用いて決定した焦点面検出器のデザインを元に実機の一部を作成し、夜間に屋外で光源を観測する試験を行なうことで、実機での性能評価を行なった。 実機試験では、光学系を評価する最低限の本数である4本のPMTを、視野中央及び視野端に実装した検出器を用いた。水平方向に望遠鏡を向け、GPSを用いて正確に位置を測定可能な光源を50m先で移動し、波形を取得した。同様の試験をシミュレーション上で実装し、実データ及びシミュレーションで得られた信号を比較したところ、よく一致しており、実機はデザインされた性能を満たしていることがわかった。 また並行してシミュレーションを用いた空気シャワーに対する再構成手法の開発も進み、マルチパラメータのフィッティングにより到来方向を約3度の分解能で測定可能であることがわかった。 さらに、研究組織に海外の研究者2名が新たに加わることとなり、研究組織の国際化が実現した。これは本計画を推進する上で非常に大きな成果である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では本年度は、焦点面検出器の構築と国内における実機を用いた性能評価を行なう予定であり、一部のPMTのみ実装した検出器を用いてこれを達成することができた。前年度決定したデザイン通りの12本全てのPMTを実装しなかった理由は、本試験結果次第ではデザインを変更する可能性があったためである。ただし試験結果として、実機はシミュレーションによって得られた期待通りの性能を示すことがわかったため、焦点面検出器は本デザインのまま進めることとなった。 一方で、現在の事象再構成プロセスでは十分な精度が出ることはわかった物の、多くのパラメータフィッティングに時間がかかり過ぎる問題については解決まで至っておらず、大局的最適解を探すアルゴリズムについて調査を継続する必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度制作した実機は期待通りの性能を示すことがわかったため、当初の計画通り本年度夏から秋にかけて米国ユタ州のTelescope Array(TA)実験のサイトに設置し、TA実験との空気シャワー同時観測を行なうことで、実観測における装置の性能評価、事象再構成の精度の検証を行なう。まだ未定ではあるが、我々と同じく安価な大気蛍光望遠鏡による観測手法の研究を、我々とは違う光学系を用いて行なっているFAST実験との同時観測についても話が進んでおり、実現すればデザインの違いの影響を直接的に検証することが可能となり、検出器への理解を深めることが可能である。
|