研究課題/領域番号 |
21K03607
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
廣瀬 健太郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (20436083)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 多核子移行反応 / 角運動量移行 / 核分裂 / 多核子移行 / 角運動量 |
研究開始時の研究の概要 |
入射核から標的核に陽子や中性子が移動するような原子核反応を核子移行反応という。この反応は一度の実験で、多種類の原子核を広い領域にわたって合成することができるため、超重元素合成の新たな方法として期待されている。しかしながら反応メカニズムは理解されていない。本研究では、合成核が核分裂するような反応系を選び、その核分裂片角度分布が角運動量に依存することを利用して、多核子移行反応において重要な物理量である合成核の角運動量を実験的に導出する手法を確立することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に取得した18O+237Np反応における核分裂データの解析を行った。シリコンテレスコープで検出した多核子移行反応後の散乱粒子を、ΔE-Eプロットの解析から識別した結果、複合核として236-240Np、237-242Puおよび238-245Amの合計19核種を同定した(例:18O+237Np→12C+243Amなど)。 複合核に持ち込まれた角運動量の軸は、入射粒子と散乱粒子の運動量ベクトルの外積で定義される。複合核の静止系において、角運動量軸から観測した核分裂片の角度分布W(θ)を導出した。測定したW(θ)を理論式(J.R.Huizenga et al., Phys. Rev. 177,1826(1969))でfittingすることで移行角運動量の平均値<I>を導出した。 先述の理論式には角運動量分布F(I)を仮定する必要がある。一般的に入射粒子と標的核が融合する反応ではF(I)=2I+1と表されるが、多核子移行反応ではこの分布を仮定することが妥当かは自明ではない。そのためF(I)=δ(I-I_MAX)なる極端な分布の場合における<I>も計算した。その結果、両分布で高々2%の違いしかなく、統計誤差の範囲内で一致しており、導出される<I>はF(I)にあまり依存しないことがわかった。 移行核子数Δn=-1から3ないし4において<I>は単調増加し、それ以降、本測定上限であるΔn=8において<I>~16hbarで一定になることがわかった。角運動量が小さいほど原子核は核分裂しにくくなるため、移行角運動量が頭打ちになる現象は、超重原子核合成において有利に働く特徴である。頭打ち現象が散乱粒子の検出角度範囲などの実験条件によるものなのか、または物理的な理由によるものなのかを調べることが、今後の課題としてあげられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初予定していた(1)取得データの解析、(2)低エネルギービームに対応するための検出器配置の再考の内、(1)を達成した。多核子移行反応は散乱粒子がgrazing角付近に散乱される場合に起こりやすいと考えられており、入射エネルギーが低くなるとgrazing角が大きくなるため、(2)の検出器配置の再考が必要である。しかしながら(1)のデータ解析の結果、移行角運動量の頭打ち現象が観測され、その理由が検出器配置によるものかどうかを判断するため、より詳細な解析が今後必要である。またその結果と(2)を総合して検出器の配置を考察するべきである。以上、(1)のデータ解析により角運動量の実験的導出を達成したことに加え、興味深い現象が観測されたことから、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に行ったデータ解析から、移行角運動量の頭打ち現象が観測された。これは超重原子核合成において重要となる特徴と考えられる。より詳細な解析からその原因究明を試みる。
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