研究課題/領域番号 |
21K03608
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
亀井 直矢 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准技師 (80808733)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
中途終了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ビーム標的冷却 / 自然循環 / 限界熱流束 / 気液二相流 / 沸騰伝熱 / 沸騰冷却 / 標的冷却 |
研究開始時の研究の概要 |
加速器を用いた素粒子物理学実験の重要性は近年ますます高まっており、その需要に応じてビームの大強度化が進んでいる。生成されたビームを標的に照射することで目的の素粒子を生じさせるが、ビーム標的における発熱密度は増加の一途を辿っている。そのため近年では水冷による標的冷却手法の必要性が高まっているが信頼度が高く堅牢な冷却水循環システムが必要となる。そこで、本研究では新たな標的冷却手法として、ビーム発熱自体が冷却水を循環させる駆動力となるため一次冷却系に循環システムが不要となることに加えて、強制対流の水冷に比べて熱伝達率が一桁高い沸騰伝熱を利用できるビーム発熱による自然循環型標的冷却システムを提案する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、ビーム標的にて発生する発熱自体を冷却水の循環駆動力として積極的に活用することにより、冷却水を循環させるための電力やポンプなどの堅牢な冷却水循環システムが不要となるような、自然循環型標的冷却システムを開発することである。本研究では、冷却水の自然循環を生じさせる手法として、相変化を伴う沸騰冷却を用いて標的を冷却することにより、水と蒸気との大きな密度差を循環駆動力として活用する手法を採用している。従って、ビーム標的設計時に必要となる要素として、ヒータ表面が蒸気膜で覆われることにより除熱性能が著しく減少する単位面積当たりの除熱量である限界熱流束(CHF)と自然循環流量との関係を実験的に評価することが本研究の重要な課題である。 製作したビーム標的模擬ヒータには熱電対が設置されており、CHF時には熱電対が測定するヒータ表面温度が急上昇すると想定していた。しかし、製作した沸騰試験装置を用いてCHF試験を実施したがCHFが検出されず、ヒータが破損してしまった。そこで、破損したヒータを切断して断面を観察することでヒータ破損のメカニズムを特定し、その知見を元にCHF検知感度が優れたヒータを開発し、通電試験を実施した。今後はCHF試験を実施する予定であり、準備を進めている。また、CHF増大効果が期待されるヒータ周りの流路構造について調査・検討を行い、流路構造物の設計を概ね完了した。 なお、ヒータの設計や製作には時間を要したため、その期間にポンプを用いてヒータ部に空気を供給することにより沸騰を模擬した水・空気自然循環試験を実施した。 試験の結果、自然循環流量に対する気泡流仮定条件での解析評価結果とスラグ流仮定条件での解析評価結果との間に実験値が概ね存在することが確認できた。また、実機設計の際はより保守的な自然循環流量を見積もるスラグ流仮定条件で評価すればよいという目途を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CHFを感知できなかったことによるヒータ破損を踏まえて、CHF検出感度を大幅に向上させたヒータを製作したが、設計・製作に時間を要しただけでなく、計測系のサンプリング速度も従来の10倍以上と大幅に性能を増強させており、これら物品の手配やセットアップにも時間がかかったため今年度予定していたCHF試験が実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まずプール沸騰条件にて低出力での予備試験を実施する。その後、段階的に出力を高めていき、プール沸騰条件でのCHF測定試験を実施する。また、この際に取得できるヒータ表面での熱流束とヒータ表面温度との関係(沸騰曲線)を評価し、従来研究と比較することにより、試験装置と計測器類とが正常に機能していることを併せて確認する。さらに、循環ループ構造を有する体系での自然循環条件にて同様の試験を実施し、自然循環流量とヒータ出力データを取得し、試験結果を一次元熱流動解析結果と比較する。また、自然循環時のCHFデータを併せて取得する。最後に、設計した流路構造物をヒータ周りに設置してCHF試験を行い、流路構造物によるCHF向上効果を実験的に求める。
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