研究課題/領域番号 |
21K03609
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
渡辺 丈晃 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (00415043)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 金属3Dプリンター / 金属積層造形法 / タングステン / 2次粒子生成標的 / 2次粒子生成標的 / J-PARC / ハドロン実験施設 / 金属3Dプリンター |
研究開始時の研究の概要 |
J-PARCハドロン実験施設においては基礎物理実験(素粒子・原子核実験)で使用されるK中間子やπ中間子を生成するための2次粒子生成標的(以下、標的)を運用している。標的素材としては、高密度・高熱伝導の金属が適しており、次期標的の候補の1つとしてタングステン製の回転円盤型標的の開発を進めている。本研究では、その一環として、最近実用化されたタングステンの金属3Dプリンターを活用することで、通常の切削加工では困難な複雑なフィン形状をもつ円盤が実現可能か試作・検証を行うものである。その結果として回転円盤型標的の冷却能力を向上させ、より大強度の粒子生成が可能な標的の実現を目的としている。
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研究実績の概要 |
金属3Dプリンター(金属積層造形法)による純タングステン製2次粒子生成標的の製作可能性の検証のため、現状最も普及しているパウダーベッド型レーザー溶融方式の金属積層造形法により純タングステン素材の造形を行い、本研究において最も重要な検証項目の1つである物性値等の測定を行った。その結果、金属積層造形法により造形された純タングステンの密度は標準的な製作法による試験片と比較し密度は88%程度、比熱は同程度、熱伝導率は60%程度であることが明らかとなった。また、機械強度については、シャルピー試験を実施したところ、造形された純タングステンは、通常製法と比べて吸収エネルギ-が72%程度であることがわかった。試験片の断面観察を行ったところ、素材内部に密度や強度等の低下の要因となる多数の欠陥(空隙)が観察され、今後の改良方針として内部空隙の低減が必要不可欠であると結論を得た。 引き続き、試作した純タングステン試験片について、HIP処理(熱間等方圧加圧法)を行い、内部欠陥(空隙)の減少効果や物性等の改善の有無について検証をおこなった。その結果、密度および熱伝導率についてはHIP処理無しと比べて10%程度上昇する効果が見られたが、シャルピー試験の結果および断面観察(マクロレベル)では明らかな改善は見られなかった。これはタングステンの元々の性質(脆性等)に加えてHIP処理で特に効果のある閉じたミクロサイズの空隙が比較的少ないことが1因であるためと推定している。 上記と並行して、本研究におけるもう1つの重要な目的であった造形能力を確認するため、2次粒子生成標的を想定した内周側に3次元的な曲面フィンを備えた円盤型形状(1/2片)について、実際に純タングスステンにより造形試験を実施し、3次元的なフィン構造が純タングステンにおいても造形可能であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、本研究最大の目標であった、①金属3Dプリンターにより造形された純タングステン素材の物性および機械強度について測定を実施したこと、②金属積層造形法による造形能力を実証試験、まで達成することができ、全体として順調に進展していると評価できる。ただし、機械強度の内、引張試験については素材準備の都合により次年度実施とすることとしたため、その点のみが最終年度の実施となる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に実施できなかった引張試験についてまずは実施して、金属3Dプリンターにより造形された純タングステン素材の機械強度についての評価を完了する予定である。以上の研究結果を総合し、2次粒子生成標的の適用可能性の検討を行い、研究総括を行う計画である。
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