研究実績の概要 |
理学観測機の開発には「いかに、ベストに近い状態で宇宙での計測・観測を行なうか」を考えておく必要がある。性能劣化を引き起こす要因のうち, 検出器に共通しているものは大気中の気体分子との反応に起因するものである. これまでは検出器と大気との接触を抑える為に, 検出器を密閉容器に入れ、打ち上げの後に容器の蓋を開ける, というオーソドックスな方法で対応してきた. そのためには, 打ち上げまでの長い時間(数ヶ月~1年) 真空排気が必要となる. これが不可能なのである. 衛星を組立場または試験場から射場まで搬送している間は, 電力を安定して供給することはできないし, ロケットに推進燃料を充填したあとは, 燃料漏洩による爆発事故を防ぐため, 発火の可能性のある装置は撤収しなければならず, 真空ポンプはここで撤収せざるを得ない. 蓋を閉めた状態でも, 容器の内壁からのアウトガスにより, 真空ポンプを撤収してしまうと容器内は圧力が高くなり, 検出器の性能は落ちる. 事前のベーキングが容器内壁からの脱ガス量を減少させるが,光電物質の蒸発を招くため検出器の性能劣化は避けられない。つまり,地上にある間は検出器には常時, 真空排気が必要であるにも関わらずこれができず、 打ち上げる前から観測機の性能は日に日に低下しているのである。劣化を有効に防ぐ手段が乏しいことから、人的費用と労力に見合わず、高感度の検出器の使用を断念した計画もある。つまり、性能が高いデバイスを開発しても、その性能を維持する仕組みを考えなければ実現には至らないということである。 これまでの飛翔体観測の経験から、飛翔体の地上試験中における観測機の感度劣化を防ぐことが、今後の衛星観測には必要である。①常時電源を必要せず②機械・熱衝撃に耐性があり③飛翔体に搭載できる小型真空ポンプ(10リットル/秒 程度)を本研究で開発する。
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