研究課題/領域番号 |
21K03613
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木野 勝 京都大学, 理学研究科, 助教 (40377932)
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研究分担者 |
軸屋 一郎 金沢大学, フロンティア工学系, 准教授 (90345918)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 望遠鏡 / 分割鏡 / フィードバック制御 |
研究開始時の研究の概要 |
大口径の望遠鏡を実現する手法として多数の小さな鏡を望遠鏡の上に並べて1枚の大きな鏡として機能させる分割鏡方式がある。分割鏡はフィードバック制御によりその位置・姿勢を正しく保持する必要がある。従来のシステムでは重力変形や熱変形などのゆっくりとした変位は補正できたが、望遠鏡自身や観測装置が発生する機械振動は抑制できていなかった。そこで望遠鏡からの振動を伝えず制御に必要な力だけを発生させるアクチュエータとしてボイスコイルモータを使った制御システムを試作し有効性を確認する。
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研究実績の概要 |
前年度より行っている既存の制御システムで得られた制御データの解析を進め、それを本研究で開発しする分割鏡制御システムの設計に適用する作業を行った。既存の制御システムは本格運用開始から4年が経過し、アクチュエータの経年劣化など寿命についての情報が得られ始めているため、新たに開発する制御システムでも可動部分を中心にこれらを考慮した詳細設計を行った。また1年目に判明した冬場の低温時に鏡面が変形する問題について原因究明を進めたが、完全な特定には至っておらず、新たな制御システムの設計への反映は対処療法的なものにとどまっている。ボイスコイルモータを含む主要な構成要素については部品の選定を終え、それらを組み込む機械設計・回路設計も概ね終えたものの、世界的な電子部品・機械部品の供給不足の影響を受けてボイスコイルモータおよびそのドライバの調達に時間がかかっており、年度内に購入できなかった。一方で本分割鏡制御システムの影響を最も強く受ける補償光学装置の開発が進み、望遠鏡に搭載しての試験観測が始まったことで、本システムへの要求性能が固まり、設計の不定性を減らすことができた。前年度に引き続き、開発した制御システムを評価するための実験環境の構築は継続している。 実機の開発や評価が進んでいないため、本研究についての直接の論文出版・学会発表などは無いが、本研究に関連して既存の制御システムの評価、および補償光学装置に用いる波面センサについて論文を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
使用するボイスコイルモータの選定を終え、それに合わせた機会構造の詳細設計を進めた。ボイスコイルモータについては当初は一般的な円筒形コイルを想定していたが、必要なストローク全体で可動部と固定部のクリアランスを確保するのが難しく、角型コイルを使用する形に設計変更が必要となった。また、それに合わせてボイスコイルモータのドライバの選定、およびその上位コントローラも含めた回路設計も修正を行った。本システムでは遊びのない精密な制御のために弾性変形を用いたテコによる減速機を使用するが、とくに繰り返し変形に伴う寿命については既存の分割鏡制御システムでのデータ取得と解析結果を適用して設計を完了した。主たる制御部に加えてオフローダー部分についても、前年度の方針のとおり単純な錘を用いた受動型を前提として詳細設計を行った。大半の機械設計は終えたが、世界的な電子部品・機械部品の供給不足で納期が未定な部品があり、確実な入手が見込めるまで他の機械加工品等の調達を見合わせているため進捗に遅れが生じている。望遠鏡実機に搭載する前に本制御システム単体で動作実験を行うための環境構築については、上記設計と並行してダーミーウェイト、および望遠鏡と同様に角度を変えられる支持台等の岡山天文台への搬入を完了し整備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に購入できなかったボイスコイルモータ・ドライバ等の主要部品については早急に購入を進め、入手の目処が立ち次第、機械加工部品についても調達を始める。計画全体が遅れていることから、当初予定していた2種類のオフローダー方式の比較は取り下げ、まずは受動型オフローダーでシステム全体を完成させ、余裕があれば能動型オフローダーに着手する方針に切り替える。単軸駆動での性能評価と3軸を組み合わせた分割鏡1枚での性能評価は、できる限り使用部品や実験環境を共通化して実験時間の短縮を図る。これらの方針変更により2023年中にテストベッド上での組み上げと性能評価を終え、年度内には望遠鏡実機に搭載しての動作試験を行えると見込んでいる。また研究期間の終了後であっても、本研究で得られた成果については論文・学会発表を通して公表していく予定である。
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