研究課題/領域番号 |
21K03637
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17010:宇宙惑星科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鎌田 俊一 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (40723474)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 熱力学 / 水星 / コアマントル境界 / 潮汐加熱 / 硫化物容量 / 準格子モデル / 元素分配 |
研究開始時の研究の概要 |
近年の惑星探査による多種多様・大量の観測データの解析や物質分析技術の向上により、内側太陽系の惑星材料物質に対する理解が深まってきた。その結果、これまで例外視されてきた水星が、実は地球を含む内惑星物質を探る上で重要な天体であることが判明した。本研究では、主要な元素であり、かつ岩石(地殻・マントル)と金属鉄(核)の両相に分配される硫黄に注目する。硫黄の挙動を熱力学の観点でモデル化することで、水星全体の化学組成の制約し、内惑星形成の描像に迫る。
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研究実績の概要 |
本年度は大きく分けて2点の研究を行った。1点目は熱力学平衡計算に向けた熱力学モデルの構築、2点目は温度推定のための解析的研究である。 熱力学平衡計算については、昨年度に引き続き硫黄に着目し、マグマー液体金属間での硫黄の分配係数に関わる「硫化物濃度」の指標作成を進めた。具体的には、ポリマーモデルであるYokokawa-Niwaモデルの実装を進めた。ここでは混合のエネルギーが重要なパラメータであるので、熱力学データを精査し、同エネルギーをいくつかの系で決定できた。また、硫化物濃度に関する先行研究の計算プログラムのソースコードを入手したので、それの解読を進めた。その結果、論文に書かれていない計算が多数行われていることが明らかとなった。ただしこれらについては先行研究の一部再現や解読にとどまっているため、成果の発表などは行っていない。 熱力学平衡計算では、「与えられた温度と圧力での元素の分配」が議論される。そのため、これだけでは温度は決まらず、またそれによって結果が左右されてしまう。そのため、温度の推定は重要な課題となっている。2点目の解析的研究では、深部の温度構造決定に重要な潮汐に着目し、コアーマントル境界という固液混合層の変形の定式化を行った。ここでは、固体の変形と液体の流動をカップルさせた定式化を行い、それらの解析的解を求めた。加えて、数値計算実行時における数値不安定の発生要因を突き止めるとともに、この解決法についても提案した。この研究によって、元素分配を決めるコアーマントル境界付近での温度推定の方法が確立された。これについては現在論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱力学モデルの構築は多数のデータとの比較や、他者の作った計算プログラムの解読などは、非常に時間のかかる作業であるとともに、対外的に発表できる科学的成果は少ない。他方、温度推定に関する研究が大きく前進し、論文投稿までこぎ着けた。そのため、目に見える進捗は少ないが、どれも必要な作業であり、着実に進めていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、本年度入手できた先行研究のプログラムのソースコードの解読を進める。論文に大まかな計算の流れが書かれているものの、実際はより複雑な計算を行っているため、その中身を理解する。これにより、本モデルとの比較がより正確に行えるようになるとともに、本モデルで追加考慮すべき要素がないか検討する。 加えて、ポリマーモデルを組み込んだ熱力学モデルの構築を進める。昨年度、本年度と同様に、様々な組成における熱力学データを集めつつ、パラメータ(混合エネルギー)の決定を行う。そして、多重変数の非線形回帰分析によって、重合度を示すフリーパラメータについての簡単な経験則の導出を目指す。
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